宇都宮牛

宇都宮牛（うつのみやぎゅう）

宇都宮牛は、栃木県の宇都宮農業協同組合（JAうつのみや）管内で肥育される黒毛和種の銘柄牛です。その品質の高さから「珠玉の味」と評され、地元だけでなく首都圏でも高い人気を誇ります。

歴史

宇都宮牛は、1972年9月に東京都中央卸売市場食肉市場で、国内10番目の銘柄牛として認知されました。1980年には日本一の高値を記録し、1983年には「宇都宮牛」として商標登録されています。2008年からは宇都宮市が「宇都宮牛復興プロジェクト補助金」を創設し、品質向上と出荷頭数増加を目指しました。

2011年には、宇都宮市内の黒毛和種肥育農家は22戸、出荷数は663頭でした。同年には、福島第一原子力発電所事故の影響で、飼料となる稲わらの放射性物質調査と牛の全頭検査が実施されました。2012年の調査では、宇都宮市内での認知度は66.8％、喫食経験者は25.2％でした。同年より、肉質等級5等級の中でも上位の枝肉に「宇都宮牛 極（きわみ）」の称号が付与されるようになりました。

JAうつのみやには2019年まで宇都宮牛肥育部会がありましたが、2020年に肉牛専門部会と統合し、肥育牛部会となりました。2020年2月末時点での肥育牛部会の会員は24人です。

生産

宇都宮牛として認められるのは、JAうつのみや管内で肥育された黒毛和種のうち、日本食肉格付協会による枝肉の肉質等級が3 - 5等級のものに限られます。また、オスは去勢されている必要があります。かつては、歩留等級がAまたはBであること、32か月齢であることも条件とされていました。

宇都宮市内の主な生産地域は、篠井地区、富屋地区、国本地区、河内地区、城山地区、平石地区、横川地区であり、特に横川地区が主力産地です。

宇都宮牛を飼育する農家には、子牛を産ませる繁殖農家と、子牛から成牛に育てる肥育農家の両方が存在します。また、出産から成牛まで一貫生産を行う農家もあります。牛舎では衛生的な環境を保ち、すべての農家が統一マニュアルに従って飼育するなど、少数精鋭で手間暇をかけて育てられています。

繁殖農家では、母牛に人工授精を行い、約290日後に出産します。生まれた子牛は約10か月間、ストレスがかからないように育てられた後、家畜市場へ出荷されます。肥育農家は、家畜市場などから子牛を購入し、約20か月かけて成牛に育て、食肉市場へ出荷します。飼料には独自の配合飼料「特撰宮牛」を使用します。一部の農家では、宇都宮市内の稲作農家から稲わらを仕入れ、牛糞の堆肥を提供するなど、循環型農業にも取り組んでいます。

流通と消費

出荷された宇都宮牛は食肉市場で買われ、加工・流通を経て消費者に届けられます。2022年度の出荷頭数は119頭で、そのほとんどが東京都中央卸売市場食肉市場へ出荷されます。

宇都宮牛は、良質なタンパク質と脂質に富み、脂身に甘みがあるのが特徴です。肉本来のおいしさを味わえると評価されており、肉質も柔らかいと評判です。すき焼き、焼肉、しゃぶしゃぶ、ステーキなど、様々な料理で楽しむことができます。

ほとんどが東京都へ出荷されるため、宇都宮市内での流通量は限られています。宇都宮観光コンベンション協会によると、宇都宮牛を提供する飲食店は7店、販売店は2店です。その他、宇都宮牛を使った宇都宮餃子や、「宇都宮牛」の刻印があるどら焼きなども販売されています。

もう一度検索