宇都宮豊房

宇都宮豊房（うつのみや とよふさ）

宇都宮豊房は、1293年生まれの武将で、伊予宇都宮氏の初代城主です。彼は藤原氏の末裔であり、豊前宇都宮氏の第6代当主である宇都宮頼房の次男として生まれました。位階は従四位下にあたります。豊房の生涯は、地元の伝説と結びつき、彼の業績は今でも語り継がれています。

豊房の出自と家系

豊房は、藤原鎌足の15代目の子孫である藤原宗円から始まります。宗円は康平6年（1063年）に下野国宇都宮城の初代城主となり、その子孫が「宇都宮氏」を名乗りました。豊房はその家系にあたる重要な存在です。彼の祖先、宇都宮宗房系は代々、豊後国の城井城を治めてきました。

守護職への任命と城の築城

元徳2年（1330年）、豊房は鎌倉幕府の北条氏により伊予国の守護職に任命されました。彼は翌年に大洲に入り、地蔵ヶ嶽に地蔵ヶ嶽城、現在の大洲城を築くことにしました。この城は伊予宇都宮氏の本城としての役割を果たしました。

城を造る際、豊房は五郎村に「城を願う寺」として城願寺を建立しました。この城願寺は、宇都宮家の菩提寺となり、豊房が後世に残した信仰の象徴ともなります。

崩れた高石垣と人柱の伝説

地蔵ヶ嶽城の築城の際、豊房は高石垣を何度も積んだものの、すぐに崩れてしまいました。この奇妙な現象に人々は神のたたりだと噂し、石垣の下に人柱を立てることになりました。しかし、自ら進んで人柱になる者はおらず、くじ引きで決めることになりました。そのくじに当たったのが「おひじ」という若い娘でした。

おひじは、豊房に「せめてこの城下を流れる川に自分の名前をつけて欲しい」と遺言を残しました。彼女の命と引き換えに、立派な石垣が完成し、城も無事に建てられました。豊房はその願いを叶え、川に「肱川」と名付け、おひじの記憶を称えました。この出来事は、地域に今も深く根付いています。また、おひじの住んでいた場所は「比地町」と呼ばれるようになりました。

豊房の晩年と後継

豊房には子供がいなかったため、宇都宮貞泰の四男である宇都宮宗泰を養子として迎え入れました。豊房は1369年8月18日に亡くなり、享年77歳でした。彼の遺体は城願寺に葬られ、戒名は「城願寺殿継將萬真大居士」となりました。現在でも、その五輪塔の一部が境内に祀られています。

豊房の生涯は、武将としてだけではなく、地域に伝わる数々の伝説と共に語り継がれ、その影響は今なお大洲市や周辺地域に色濃く残っています。

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