安川雄之助

安川雄之助：昭和を駆け抜けた実業家の生涯

安川雄之助 (1870-1944) は、20世紀前半の日本経済を代表する実業家の一人です。その名は、時に「カミソリ安」「物産の安川」「三井のムッソリニー」と称されるほど、当時の財界において大きな影響力を持っていました。本稿では、彼の波瀾万丈な生涯と、日本経済史における貢献について詳しく見ていきます。

京都から世界へ：若き日の安川

1870年、京都府に生まれた安川は、第三高等学校を経て大阪商業学校を卒業。その後、三井物産に入社します。これは、彼の輝かしいキャリアの始まりでした。天津支店長、満州営業部長、大連支店長と要職を歴任し、その手腕を遺憾なく発揮していきます。1914年には本店営業部長に就任、1918年には取締役、さらに常務取締役に昇進。その辣腕ぶりは、周囲の注目を集めました。

三井物産の躍進と改革：時代の波に乗る

安川は、1924年には三井物産の筆頭常務に就任します。その在任中は、製造部門への積極的な進出を推進。東洋レーヨンや三機工業といった企業の設立に尽力し、三井物産の事業多角化を大きく推し進めました。また、海外貿易の拡大にも力を注ぎ、積極的な国際戦略によって三井物産の成長に大きく貢献しました。これらの功績から、三井合名会社理事にも就任しています。

さらに、安川は1926年には東洋レーヨン初代会長、1928年には日本製粉会長を歴任するなど、数々の企業を率い、その経営手腕は高く評価されていました。しかし、その一方で、営利主義的な姿勢が批判の的となることもありました。

三井改革と新たな挑戦：時代の転換点

昭和初期、財閥解体に向けた世論の高まりを受け、三井合名会社では大規模な改革が実施されます。この改革の中心人物であった池田成彬常務理事の主導の下、安川は1934年に三井物産を退社することになります。

しかし、安川の実力は衰えていませんでした。1936年には東洋拓殖総裁に就任し、再び新たな挑戦の舞台に立ちます。

著作とその後：記録に残る足跡

安川は、実業家としての活動以外にも、『我が海外貿易と日支経済関係』（白岩竜平との共著）や『産業貿易観』といった著作を残しています。これらの著作は、当時の経済状況や安川自身の考えを知る上で貴重な資料となっています。

安川雄之助は、1944年にこの世を去りました。彼の生涯は、激動の時代を駆け抜けた実業家の物語として、現代にも多くの示唆を与えてくれます。その功績は、日本の経済史に燦然と輝くものとして、今もなお語り継がれています。

参考文献

『奮闘活歴血涙のあと』実業之日本社、1925年
『非常時財界の首脳』武田経済研究所、1938年
* コトバンク - 安川雄之助とは

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