安平古堡

安平古堡：台湾の歴史を刻む古城

安平古堡は、台湾台南市安平区に位置する、台湾で最も古い城塞です。1624年にオランダ東インド会社によって築かれ、当初は「オラニエ城」と呼ばれていました。その後、「ゼーランディア城」と改名され、台湾におけるオランダ統治の中心地として機能しました。この城は、台湾の激動の歴史を物語る重要な史跡であり、現在は「台湾城残蹟」として国家一級古蹟に指定されています。

歴史

安平古堡の歴史は、17世紀初頭のオランダ東インド会社の進出に始まります。1622年、マカオ占領に失敗したオランダは、澎湖島を拠点としようとしましたが、明朝の抵抗に遭い、台湾に目を向けました。1623年、オランダは一鯤身に簡易な城砦を築き、これが安平古堡の前身となりました。翌1624年、オランダは明朝との間で8ヶ月に及ぶ衝突を繰り広げ、最終的に講和が成立。澎湖の要塞を破棄する代わりに、オランダは台湾に進出することを認められました。

台湾に到着したオランダは、既存の城砦を再建し、「オラニエ城」と命名しました。その後1627年に「ゼーランディア城」と改称され、大規模な建設工事が進められ、1632年に第1期工事が完了しました。当時、この城砦は台湾におけるオランダ勢力の中枢として、行政と貿易を統括する重要な役割を担っていました。

1662年、明朝の遺臣である鄭成功は、新たな拠点を求めて台湾に侵攻し、オランダ勢力と激しく対立しました。鄭成功軍はゼーランディア城を攻撃し、オランダ勢力を台湾から一掃することに成功しました。これにより、台湾史上初めて漢人による政権が樹立されました。鄭成功はゼーランディア城を「安平城」と改名し、鄭氏政権3代にわたって支配者の居城となり、「王城」と呼ばれるようになりました。

しかし、1683年に清朝による台湾統治が開始されると、政治の中心は城外に移り、安平城は軍装局として使用されるようになりました。城砦の重要性は次第に低下し、改修が行われないまま荒廃が進みました。1868年には、イギリス軍艦の攻撃を受け、その際にイギリス軍が放った砲弾が城内の火薬庫に命中し大爆発を起こし、城砦は廃墟と化してしまいました。1874年、台湾出兵問題で日本と善後策を協議した沈葆楨は、台湾海防の充実のために安平城の城壁を二鯤身に運び、億載金城建設の資材としました。

日本統治時代とその後

日本統治時代には、城垣は整地され、日本式の宿舎が建設されました。オランダ時代に築かれた城砦は完全に姿を消すこととなりました。戦後、国民党政府は城址を「安平古堡」と命名し、僅かに残る城址の保護を決定しました。現在は中華民国内政部によって一級古蹟の一つとして保護されています。

現在、観光客が展望を楽しんでいる高台は、日本統治時代に建設されたものであり、保護対象の安平古堡には含まれていません。また、昭和期には、1628年にタイオワン事件を起こした浜田弥兵衛の事績を記念して「贈從五位濱田彌兵衛武勇之趾」と刻まれた石碑が建てられましたが、戦後、これは「安平古堡」と書き換えられました。

現在の安平古堡

現在、安平古堡には1930年に日本によって建設された税関舎が残っています。この洋風建築物は、1975年に大規模な修復が行なわれた後、オランダ統治時代から現代に至る安平の歴史を紹介する資料館として利用されています。

安平古堡は、台湾の歴史を語る上で欠かせない重要な史跡であり、その変遷は台湾の多文化的な歴史を象徴しています。訪れる人々は、この場所で過去の出来事に思いを馳せ、歴史の重みを感じることができるでしょう。

アクセス

住所：台南市安平区国勝路82号

交通：台南駅前から2系統バスに乗車し、「安平古堡」で下車

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