安平大君

安平大君の生涯と作品

安平大君（あんへいだいくん、1418年 - 1453年）は、李氏朝鮮の王族で、書家として名を馳せました。彼の尊号は瑢（ヨン）、字は清之（せいし）、様々な号を持ち（匪懈堂、琅玗居士、梅竹軒）、父は王の世宗、母は昭憲王后の子供です。彼の家系は多くの権力を持つ王族であり、特に世宗の第3王子であり、第5代国王文宗及び第7代国王世祖の同母弟として知られています。

幼少期からの成長

幼少期、安平大君は3歳で亡くなった叔父、誠寧大君の養子として育てられました。1428年、10歳の時に安平大君に封じられると、大君としての生活が始まります。同年、彼は左副代言の鄭淵の娘と結婚し、1430年には臨瀛大君らとともに学問を修め始めました。この時期には、父である世宗が彼の野心に警戒し、兄・首陽大君と共に王宮から離れさせたと言われています。

1438年からは、六鎮が設置されたことで、他の王子たちと共に女直（満州）の討伐に従事し、金宗瑞たちと関係を深めることになります。成長するにつれ、狩りを楽しんだり、文人たちと交流したりしながら過ごし、文宗の時代には朝廷においてもその才能が際立つようになりました。特に、文宗の子が即位した際には、権力者たちと共に人事権を掌握し、首陽大君一派と対立するようになります。

権力闘争と最期

1453年、安平大君は首陽大君の武力に敗れ、権力を失い、江華島に流されています。流刑先での8日後、彼は賜死されることとなりました。この事件は「癸酉靖難」として知られています。安平大君の長男である李友直も同様に流刑となり、家族は散り散りになりました。彼の財産は没収され、養父の誠寧大君の遺族も同様に処分されました。安平大君の継母も爵位を剥奪され、流刑にされるなど、彼の死によって多くの家族が苦しむこととなったのです。

書家としての側面

安平大君は書家としても才能があります。彼は、安堅や朴彭年らと親交を持ち、自らも詩文や書画を作成しました。しかし、彼が処刑された後、兄の世祖によって多くの作品が破壊されてしまいました。現存する作品は少なく、主に石碑に用いられたものが多いのですが、唯一の直筆作品である『小苑花開帖』は国宝第238号に指定され、2001年に盗難に遭って行方不明となっています。

家族関係

1429年に左議政の娘・迎日鄭氏と結婚し、2人の息子をもうけました。息子の一人、李友諒は1452年に病に罹り、迎日鄭氏は1453年に亡くなりました。安平大君は妻との間に好関係ではないという記録もありますが、彼の家庭生活は複雑でした。彼には世宗の他の子どもたちや、政治的ライバルであった首陽大君との不和もあったため、王族としての人生は波乱に満ちたものでした。

このように、安平大君は王族として、また一人の書家として、激動の時代に生きた人物でした。彼の文学と芸術に対する情熱、そして政治的な運命は、李氏朝鮮の歴史に深い影響を与えたのです。

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