癸酉靖難

癸酉靖難（きゆうせいなん、계유정난）

癸酉靖難は、李氏朝鮮の第6代国王端宗の即位後、1453年10月に発生した重大な宮廷クーデターである。この事件では、端宗の叔父である首陽大君が主導し、幼い国王の実権を握るとともに、忠臣たちを排除した。事件の根底には、政治的権力の争いと後継者を巡る複雑な事情があった。

背景

事件は、文宗が病死し、11歳の端宗が即位した1452年5月に遡る。文宗の死去は、王朝の権力構造に大きな影響を及ぼし、権力争いが激化した。端宗は幼少であったため、彼の政治を支えるべき顧命大臣たちは、まず皇甫仁や金宗瑞であったが、これに対抗する形で世宗の次男で強力な後見人となるであろう首陽大君が登場する。皇甫仁や金宗瑞は政治的活動の中で、世宗の三男である安平大君を支持基盤として擁立し、首陽大君の力を削ごうと画策した。

首陽大君は1452年9月、明帝国に謝恩使として派遣され、そこでの一時的な隔離が彼に策を講じる絶好のチャンスを提供した。帰国後、彼は同僚の支援を受けて、政権奪取の詳細な計画を練ることになる。

クーデターの実行

1453年10月10日の深夜、首陽大君はついに行動に移る。彼は最も手強い相手である金宗瑞を私宅に誘い出し、その場で彼を惨殺した。その後、同じく彼に反対していた皇甫仁をはじめとする顧命大臣たちを次々と襲撃し、権力を完全に掌握した。安平大君は背後で操り、政権掌握の実行犯であったにもかかわらず、事件後まもなく江華島に配流され、後に死薬を賜ることとなった。

首陽大君が新たに政権を掌握すると、彼は臣下を登用し、特にクーデターに参加した者たちを重用した。こうして1455年6月には、端宗は譲位し、首陽大君が第7代国王世祖として即位した。

端宗復位事件

このクーデターから1年半後、1456年6月に端宗復位事件が発生する。成三問や朴彭年といった文臣たちは逮捕され、処刑されることとなる。翌年には、端宗も降格され、配流先で若くして命を落とすことになった。その後、彼の正当性が回復されるのは第19代国王粛宗の時代であった。

評価と影響

靖難の成功により、首陽大君は権力を手に入れたが、彼の野心やクーデターへの評価は、後の士林派により否定的に捉えられた。特に、儒教の立場からこの王位簒奪事件は激しく批判され、世宗は聖王と称される一方、世祖の評価は低下する結果となった。これにより、李朝の歴史における権力闘争の一端が浮き彫りにされたと言える。

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