安東聖空

安東 聖空の生涯と業績

安東 聖空（あんどう せいくう、本名：正郎、1893年8月19日 - 1983年3月3日）は、書道界において著名な日本の書家であり、特にかな書道の発展に大いに貢献した文化功労者です。彼は兵庫県で生まれ、姫路師範学校を卒業した後、教育者としての道を歩み始めました。彼の書道の原点は、20代後半に日下部鳴鶴の門人である近藤雪竹に師事したことにあります。この経験により、彼は漢字の書道を学び、さらには『粘葉本和漢朗詠集』を基に自己流でかなを独習しました。

1925年には、兵庫県立第一高等女学校の関係者を中心に正筆会を設立。これは、かな書道を普及させるための活動でした。彼自身も1929年に、かな書道の研究誌『かなとうた』を創刊し、かな書道の魅力を広げることに尽力しました。しかし当時のかな書道はマイナーであり、業界の重鎮からの疑問の声もありました。それにも関わらず、安東はその言葉を一層の励みとし、彼の書道研究への情熱はより一層強まったと言われています。

1941年、安東は教育職を離れ書道専念の生活を選びましたが、その矢先に18歳の娘を失うという悲劇に見舞われました。それでも彼は辛い日々の中で書道の研究を続け、戦後にはその努力が実を結びます。1953年に出品した日展での作品が文部省に買い上げられ、1957年には伊勢神宮の社宝として作品が永久保存されるという栄誉を受けました。

その後も安東は、書道界に多大なる影響を与える活動を続けました。1948年には日本書芸院の副会長を務め、1950年から1970年代にかけて日展の審査員や評議員として活躍しました。1973年には顧問になり、1980年に文化功労者に認定されるなど、彼の業績は広く認知されました。また、1961年には日本芸術院賞、1968年には勲四等旭日小綬章、さらに1974年には勲三等瑞宝章を受けるなど、名誉ある賞も多数受賞しました。

安東の書は、古典の影響を色濃く受けたもので、特にその清楚なかなの美しさは多くの支持を集め、彼はかな書壇の重鎮としての地位を確立しました。彼の代表的な著作には『梅雪かな帖』、全3冊の『古典かなの美』、また『かな古筆美の研究』などがあり、これらを通じて彼は書道の普及と研究に寄与しました。

安東 聖空の生涯と業績は、日本の書道界において今も色あせることない影響を与え続けており、特にかな書道に対する姿勢や理念は後輩書家たちにとっての大きな指針となっています。

もう一度検索