安田城 (越後国刈羽郡)

安田城（やすだじょう）

安田城とは

安田城は、現在の新潟県柏崎市、かつての越後国刈羽郡に存在した日本の城郭です。その歴史は古く、地域の要衝として機能しました。

築城の経緯

城がいつ、誰によって築かれたのかを示す明確な記録は見つかっていません。しかし、この城を本拠とした安田氏は、北条氏（北条家）から分かれた一族であり、彼らが鵜川庄（うかわのしょう）の安田の地に移り、この城を築いたと考えられています。特に、安田氏の初代当主とされる安田憲朝（のりとも）が築城したという説が有力視されています。一方で、「安田文書」と呼ばれる古文書の中には、憲朝の父である道幸（みちゆき）が憲朝に安田の地の地頭職を譲ったという記録が存在します。この記録から、憲朝の代より以前に、すでに何らかの館や城郭が存在していた可能性も指摘されており、築城の始まりについてはいくつかの見解があります。

室町期の動向と長尾氏との関係

室町時代、越後国は守護の上杉氏と守護代の長尾氏を中心に、度重なる内乱が発生し、非常に不安定な情勢でした。安田城は、こうした越後の混乱期において、一貫して守護代である長尾氏の勢力側に加担していました。上条の乱（じょうじょうのらん）と呼ばれる越後上杉氏の一族である上条定憲と長尾為景（ながおためかげ）の抗争においては、ごく一時期を除き、安田城は長尾氏を支持しています。特に、天文23年（1554年）に北条高広（きたじょうたかひろ）が長尾景虎（ながおかげとら）、後の上杉謙信に対して謀反を企てた際には、当時の安田城主であった安田景元（やすだかげもと）がいち早くその情報を察知し、景虎に報告したことは有名な逸話として知られています。この功績は、長尾氏にとって安田城がいかに重要な拠点であったかを示しています。

城主・安田景元とその系譜を巡る問題

安田景元が安田城の城主となった経緯には、やや複雑な事情が絡んでいます。景元は安田氏の本家筋に近い庶流の出身であるとみられています。永正12年（1515年）、長尾為景は景元を安田氏の新しい後継者として認めましたが、安田氏の惣領家自体は、古文書によれば本家筋の女性が継承していたとされています。一方で、系図上では安田広春（やすだひろはる）が安田氏を継いだと記されている場合が多いようです。しかし、この広春は、北条氏や安田氏の庶流から出て上杉氏の奉行人となった人物であり、安田氏の本家筋を継いだ女性の婿として、その名代を務めていた可能性が指摘されています。安田景元が実際に安田城に入城し、本格的に城主としての立場を固めたのは、長尾為景の尽力や後押しもあり、天文2年（1533年）に上条定憲らの勢力と戦った後のこととされています。このように、安田氏の系譜や城主の継承については、古文書と系図の間で差異があり、研究者の間でも議論の対象となっています。

廃城と現状

安田城は、戦国時代を通じて越後長尾氏、そして上杉氏の重要な支城として機能しましたが、慶長3年（1598年）、上杉氏が豊臣秀吉の命令によって会津へ移封された際に、多くの越後の城郭と同様に、その役目を終えて廃城となりました。
現在、安田城の跡地は柏崎市内にあり、城郭の中心部分にあたる主郭（本丸）の地形は、造成を受けることなく往時の姿をほぼそのまま残しており、児童公園として整備されています。公園内や周辺には、城の防御施設であった堀切（ほりきり）や土塁（どるい）などの遺構の一部が現存しており、かつての城郭の面影を偲ぶことができます。

もう一度検索