安田実秀

安田実秀

戦国時代の越後国に生きた武将。越後北部の白河庄、安田城を本拠とした安田氏の一員であり、同氏は越後における有力な国人衆である揚北衆の一角を占めていました。主君である越後守護上杉定実、そしてそのもとで守護代を務めた長尾為景という二つの権力の間で活動しました。

実秀の名が記された最も古い史料としては、永正10年（1513年）に中条藤資との間で和解が成立した際の書状が挙げられます。この書状には「実秀」という署名が確認でき、併せて記された仮名は「弥太郎」となっています。また、これ以前の永正4年（1507年）や永正5年（1508年）に戦功を賞されて得た感状に見える「安田但馬守」という人物が、この実秀に相当すると現在では推定されています。

永正10年（1513年）は、実秀にとって激動の一年となりました。この年、越後守護上杉定実と、国政の実権を握る守護代長尾為景の間で深刻な対立が勃発します。安田氏は、当初は守護である定実側を支持する立場を取りました。しかし、長尾為景の仲介や働きかけによって、敵対していた中条藤資との間で和解が成立し、安田氏も長尾為景陣営に加わることになります。

ところが、この立場の転換は短期間で覆されました。同年中に安田氏は再び上杉定実側へと転じたため、長尾為景方の反撃を受けることとなります。為景の命を受けた中条藤資や築地忠基といった武将たちが、安田氏の居城である安田城を攻撃しました。激しい攻防の末、安田城は攻め落とされてしまいます。この安田城落城の際に、実秀も討ち死にしたとする見方もあります。しかし、この時の実秀の最期については、これを裏付ける明確な史料が確認されておらず、その後の消息は定かではありません。

ただし、安田城落城からしばらく時が経った大永7年（1527年）の史料に、「安田弥太郎」という人物が大熊政秀と書状を交わした記録が見られます。この「安田弥太郎」が、永正10年当時の実秀の仮名と同じであることから、安田城の落城後も実秀が生存していたとする説も存在します。

後に上杉謙信の重臣として名高い安田城主、安田長秀（治部少輔）は、その活動時期などから、実秀の子であろうと推定されています。しかし、『安田町史』に収録されている「安田氏系譜」によれば、安田長秀の先代にあたる当主の名については「不明」と記されており、実秀と長秀の親子関係が史料で確定されているわけではない点には注意が必要です。

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