安田長秀

安田長秀（やすだ ながひで）

戦国時代の越後において、上杉氏（当初は長尾氏）の家臣として活躍した武将。越後国北蒲原郡白河庄の安田城（現在の新潟県阿賀野市）を拠点とした国人領主であり、北越後の有力な豪族集団である揚北衆の一員でした。

出自

安田長秀の家系は、桓武平氏大掾氏流城氏の支流にあたる大見氏の末裔とされています。彼らが治めた蒲原郡の安田城にちなんで、平姓安田氏、あるいは大見安田氏とも呼ばれます。上杉謙信の家臣の中には、安田景元や安田顕元、安田能元など同姓の武将がいますが、これらの人物は大江姓安田氏であり、系統が異なります。大江姓安田氏は越後刈羽郡の安田城を本拠としており、毛利安田氏と呼ばれることもあります。両家は、姓と本拠とする城が同じであったため混同されがちですが、明確に別の家柄です。

生涯

安田長秀に関する最も古い史料上の記録は享禄4年（1531年）に見られ、この頃には既に長尾為景に服属する有力豪族の一人として名を連ねていました。その後は主に通称である「治部少輔」として、さまざまな史料にその名が登場します。なお、「安田氏系譜」には別称として但馬守があったと記されていますが、これは他の史料では確認されていません。

長秀は、上条定憲の乱において長尾氏に従って以降、一貫して長尾氏、そして上杉氏の家臣として活動しました。特に永禄4年（1561年）に勃発した第四次川中島の戦いでは、上杉政虎（後の謙信）に従って獅子奮迅の働きを見せました。この功績により、同じ揚北衆の戦功者である色部勝長や中条藤資らと共に、謙信から名誉ある「血染めの感状」を賜ったと伝えられています。

謙信の死後に起こった家督争い、御館の乱では上杉景勝を支持しました。これにより、対立する上杉景虎を支援する蘆名氏からの攻撃を受け、安田城も戦渦に巻き込まれています。

史料上、「安田治部少輔」としてその活動が確認できる最後の記録は天正9年（1581年）のものです。長秀の没年については諸説あります。長秀の末裔が仕えた米沢藩が後に編纂した「御家中諸士略系譜」によれば、没年は天正10年（1582年）とされています。長秀の家督は、河田元親の三男であった与親が養子となって相続しました。与親は安田堅親と名乗ります。

異説：安田有重の存在

一方、幕末に長秀の末裔によって編纂された「安田氏系譜」は、安田長秀（但馬守、治部少輔とも）は弘治2年（1556年）に既に死去していたとしています。この系譜によれば、その後に史料上で確認される川中島の戦いや御館の乱で活躍した「安田治部少輔」は、長秀の子にあたる「安田有重」（伯耆守、治部少輔とも称す）の事績であるとされています。

この「安田氏系譜」が伝える安田有重に関する情報は以下の通りです。

長秀の実子であり、母は長尾政景の妹。
妹に下条忠親の室、安田堅親の室がいる。
「御家中諸士略系譜」などで長秀の養子とされる安田堅親（与親）は、実際には有重の養子である。
没年は文禄2年4月8日（1593年5月8日）。
戒名は自性院殿本安利源居士。
墓所は父長秀と同じく、米沢市の常安寺にあるとされる。

このように、安田長秀の晩年の事績とされるものの多くは、子の有重の活躍であった可能性も指摘されています。

逸話

弘治元年（1555年）、上杉謙信（当時は長尾景虎）が北条氏康と戦うため関東に出兵した際、長尾政景が春日山城の留守居役を務めました。政景が留守中の対応について景虎に書状で相談したところ、景虎は「安田長秀を使いとして遣わしたから、詳細は安治（安田治部少輔＝長秀）に聞きなさい」と返書を送っています。この逸話は、長秀が景虎から厚い信頼を得ていたことを示しています。

安田長秀は、その生涯を通じて上杉氏の北国における安定に貢献した、揚北衆の有力武将でした。彼の事績については、史料間の異同から生じた子の有重との混同など、まだ不明な点も残されています。

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