安田進

安田 進（やすだ すすむ）

安田 進（やすだ すすむ）氏は、日本の地盤工学分野において多大な貢献を果たした研究者であり、教育者です。特に、地震発生時の地盤の挙動や、豪雨が引き起こす土砂災害など、自然災害と地盤との関連性に関する研究を深く追求し、その対策技術の発展に寄与しました。東京電機大学の名誉教授であり、同大学の理工学部で長年にわたり教鞭を執りました。また、日本地震工学会の会長を務めるなど、関連分野における主要な学術団体で要職を歴任し、研究活動だけでなく、学術振興や技術普及にも尽力しました。

経歴

安田氏は広島県広島市に生まれ、1966年に広島大学教育学部附属高等学校（現在の広島大学附属高等学校）を卒業後、九州工業大学に進学し、1970年に開発土木工学科を修了しました。さらに学びを深めるため東京大学大学院工学系研究科へ進み、1972年に土木工学専攻修士課程を修了。引き続き博士課程に進み、1975年に工学博士の学位を取得しました。博士論文のテーマは「不規則荷重を受ける飽和砂の液状化」であり、この頃から液状化現象に対する専門的な研究に着手していたことが伺えます。

大学院修了後は、基礎地盤コンサルタンツ株式会社に入社し、実務経験を積みました。1986年には九州工業大学工学部の助教授に就任し、教育・研究者としての道を歩み始めます。1994年からは東京電機大学理工学部の教授として、後進の育成と研究に邁進しました。東京電機大学では、研究推進社会連携センター長（2013年）、副学長（2016年）といった要職も歴任し、大学運営にも深く関与しました。2018年には同大学の名誉教授の称号を授与されています。

研究分野と貢献

安田氏の研究は、地盤の液状化現象とその対策を中心に据えつつ、地震発生時の斜面崩壊、集中豪雨による土砂災害、河川堤防の損傷など、多岐にわたる地盤災害に関するものです。これらの研究は、地震国である日本において、構造物やインフラの安全性を確保し、災害リスクを低減するための技術開発に不可欠な知見を提供しました。特に液状化に関する研究は黎明期から取り組み、そのメカニズム解明や予測手法、効果的な対策工法に関する知見は、その後の防災・減災技術に大きな影響を与えています。工学博士、技術士（総合技術監理部門、建設部門）、土木学会認定特別上級土木技術者（地盤・基礎）といった資格を有しており、専門家としての高い技術力と実務への応用能力を示しています。

学会活動・受賞等

安田氏は学術界におけるリーダーとしても活躍しました。日本地震工学会では会長（2013年〜2014年）および副会長（2005年〜2006年）を、地盤工学会では副会長（2006年〜2007年）および関東支部長（2017年〜）を、土木学会では理事（2012年〜2013年）を務めるなど、国内の主要な地盤・地震工学関連学会で要職を歴任しました。また、国際地盤工学会においてもATC3委員長（2006年〜2009年）やATC10委員長（2002年〜2005年）を務め、国際的な学術交流や標準化活動にも貢献しました。

その卓越した研究成果と貢献は高く評価され、数々の賞を受賞しています。1987年には土木学会論文賞、2011年には地盤工学会研究業績賞を受賞し、学術的な業績が認められました。また、2011年には国土交通大臣賞産学官連携功労者表彰、2012年にはガス保安功労者経済産業大臣表彰を受賞しており、その研究成果が産業界や社会の安全確保に広く貢献していることが示されています。

主な著書

専門分野に関する啓蒙および技術普及にも熱心であり、いくつかの重要な専門書を執筆しています。主な著書としては、『液状化の調査から対策工まで』（鹿島出版会、1988年）、『液状化対策の調査・設計から施工まで』（地盤工学会、2004年）、『性能規定型耐震設計』（鹿島出版会、2006年）などがあります。これらの著書は、地盤工学や耐震設計の実務家や研究者にとって、貴重な資料となっています。

安田進氏は、地盤工学の理論と実践を結びつけ、特に地震や豪雨といった自然災害に対する地盤の脆弱性を克服するための研究と、その成果の社会への還元に生涯を捧げた研究者と言えるでしょう。その功績は、日本の防災技術の進歩に不可欠な貢献をもたらしました。

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