完全な遊戯

完全な遊戯

『完全な遊戯』（かんぜんなゆうぎ）は、1957年に石原慎太郎によって執筆された短編小説で、同年10月号の雑誌『新潮』に掲載された後、1958年に新潮社から単行本として発行されました。この作品は、精神的な疾患を抱えた女性に対する残虐な行為を描写しており、当時の社会に衝撃を与えました。さらに、この小説を基にした同名の映画も同年に公開されましたが、映画は原作から大きく内容が異なるため、特に注意が必要です。

あらすじ

物語は、雨の夜、主人公の礼次とその友人武井がバス停に立っている女性を駅まで送るという設定から始まります。しかし、彼らはその女性を騙して拉致するという凶悪な行為に及びます。礼次たちは彼女を別荘に監禁し、その後も性的暴力を続けます。初めは彼女の精神疾患に気づかなかった彼らですが、徐々に彼女が精神病院から逃げ出してきたことが判明します。彼女の状況を知りながら、礼次たちは仲間を呼び、さらなる残虐行為にふけるという倫理的に許されない行為が繰り返されます。最終的には、彼女を熱海の女郎屋に売ろうと試みますが、その計画にも失敗。その結果、彼女の存在が厄介となり、礼次は彼女を崖から突き落とすことで命を奪います。

評価と解釈

この作品は、発表当初からその内容が反道徳的であると批判されましたが、その一方で文学的な視点から擁護する声もありました。特に、佐古純一郎は石原に対して厳しい視線を送り、「人間を思うことができる作家であれば、自らの作品に責任を持つべきだ」と警告しました。また、平野謙は作品の題名に対する批判をし、石原が「ニヤリ」とした可能性を指摘しました。

江藤淳は、石原が描く「完璧」な概念に疑問を投げかけ、その空虚さを抽象的な運動に象徴させたと論じています。三島由紀夫は、一連の批評に異議を唱え、作品の筆致を高く評価し、石原の文学は抽象的美の表現として捉えました。彼は、作品が示す青年たちと女性との関係にある虚しさを解説し、作品の背後に広がる社会的背景を指摘しました。

さらに、秋山大輔は、三島の視点を支持しながら、現代社会の変化や性犯罪が取り上げられる中で、『完全な遊戯』がタイムレスな作品であることを示唆しました。中森明夫もこの作品を高く評価し、今後もその存在は忘れられないとし、文学的な重要性を強調しています。

映画

『完全な遊戯』は1958年11月12日に公開され、映画版は原作とは異なったストーリーラインが展開されます。映画は、学生たちがある犯罪を計画し、予想外の展開を迎える様子を描写します。ここでも、倫理に反する行為とその帰結が描かれており、作品は視聴者に深い印象を残しました。

この作品を通して、石原慎太郎の文学が持つ社会的メッセージや文学的価値が、未だ多くの議論を呼ぶことは明らかです。彼の作品に触れることで、文学が果たす役割や倫理的な問題に対する考察を深めることができます。

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