完全自動操縦装置 (日本海軍)

完全自動操縦装置

完全自動操縦装置（かんぜんじどうそうじゅうそうち）は、大日本帝国海軍によって試作された航空機の自動運転を実現するための装置です。この技術は、特に無人での航空機運用を目指し、具体的には九四式水上偵察機に搭載される形で開発が進められました。

開発の経緯

この装置の開発は、海軍航空技術廠（空技廠）の兵器部による研究の一環であり、冨沢豁技師が率いる研究グループが中心となりました。プロジェクトは1937年（昭和12年）に始動し、地上での基礎実験を経て、1940年9月には改造された九四式二号水偵（465号機）に搭載されました。この後、1940年9月末に敷設艦「沖島」上空で初めての空中実験が行われ、その後1941年春には戦艦「山城」で二度目の実験が実施されました。

二回目の実験では、発艦時の操縦ミスにより合成風力が不足して失速し、機体が墜落するという事故が発生しました。さらに、エンジンの自動停止装置の誤作動も見られましたが、それらの問題を経た後、最終的には完全な無人飛行が実現されました。空中実験後には6機の九四式水偵に自動操縦装置が搭載されたものの、装置一式の価格が5万円に達したため、実用化は断念されました。この装置は敵機に対する自爆攻撃や無人雷撃、新型機の無人試験飛行、さらには標的機や囮機としての用途を検討されていました。

システムの詳細

完全自動操縦装置は、主に3つの要素から構成されています。1つ目は電気式自動操縦装置で、これはドイツのジーメンス社製のものを改良したもので、油圧を介して三舵やエンジンを無線で操縦する仕組みです。空中での操作性は良好でしたが、離着水時の操縦には課題がありました。このため、2つの追加装置が開発されました。

2つ目は自動発進装置で、カタパルトによる射出を想定しています。この装置は射出時の衝撃で時限装置を作動させ、離陸前に設定されたクランプを順に外しながら、羅針儀と速度計の計測に基づいて自動で上昇します。3つ目は自動着水装置で、これが搭載機からの信号を受け、自動で着水を行うメカニズムです。信号を受けた後、アンテナが展開され、接触すると衝撃スイッチが作動します。このスイッチの作動から40秒後にエンジンが自動停止します。

搭載機として九四式水偵が選ばれたのは、同機が安定性に優れ、機内スペースも十分に確保されていたためです。実験機であることを示すため、機体は全体が真赤に塗装されていました。これらの自動操縦装置は航空機の無人運用技術の先駆けとなり、その後の航空技術に多大な影響を与えることとなりました。

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