九四式水上偵察機

九四式水上偵察機（E7K）

九四式水上偵察機は、川西航空機が開発し、1934年に日本海軍に制式採用された水上機であり、略称はE7Kです。この機体は、1935年から太平洋戦争の終息まで、海軍の鮮やかな戦力として活躍しました。特に、連合軍では「Alf」として呼ばれることが多かったです。

開発背景

昭和7年、日本海軍は川西航空機と愛知航空機に対し、「七試水上[[偵察機]]」の開発を命じました。これは、基地や艦載機として運用するためにカタパルト射出が可能であること、航続距離が長いこと、安定性が優れていること、最高速度が241 km/h以上であることが要求されました。この条件に応じ、川西航空機は新しい機体の開発に着手しました。

この背景の中、金属フレームに羽布張りの複葉機、そして水冷エンジンを搭載した設計が選ばれました。特に、ジュラルミン製のフロートは、耐波性の優れた形状を持ち、空気抵抗を最小限に抑えることができました。冷却器や銃座を引き込み式にすることで、飛行時の性能を向上させる工夫もされています。

制式採用と生産

初の試作機は、1934年2月にテストフライトを行いました。最高速度は目標水準には達しなかったものの、従来の水上偵察機に比べてはるかに優れた安定性と航続力を持つことが確認されました。その後、1935年5月に九四式水上偵察機として正式採用され、量産が開始されました。

九四式水上偵察機は、1934年から1940年までの間に合計530機が生産され、主に川西航空機が473機、日本飛行機が57機を製造しました。初期モデルは九一式水冷エンジンを搭載していましたが、その後の改良によって三菱瑞星空冷エンジンに変更されました。この改良によって機体の性能はさらなる向上を果たし、1938年には九四式二号水上偵察機（E7K2）として新たに制式採用されました。

運用と活躍

九四式水上偵察機は、1935年から巡洋艦や水上機母艦の主力搭載機として運用されるようになり、多くの基地に配置されて偵察や船団護衛の任務を果たしました。太平洋戦争の開戦時には、その設計の古さが否めなかったものの、基地航空隊では依然として多くの機体が使用され続けました。戦争が後半に進むにつれて、偵察活動からは退きましたが、哨戒や船団護衛、連絡任務などで終戦まで多岐にわたって活用されました。

特に興味深いのは、戦争末期には特攻機として使用された機体もあったことです。また、完全自動操縦装置の試験に使われたものや、滑空標的機や一式標的機の母機としても利用された特殊な派生型も存在しました。

スペックと武装

九四式水上偵察機の主要スペックは次の通りです：

- 全長: 10.41m
- 全幅: 14.00m
- 全高: 4.735m
- 主翼面積: 43.60m²
- 全装備重量: 3,000kg
- 最高速度: 239km/h（高度500m）
- 乗員: 3名
- 発動機: 九一式五〇〇馬力発動機二型水冷W型12気筒
- 航続距離: 2,200km
- 航続時間: 12時間

武装は、7.7mm固定機銃1丁、7.7mm旋回機銃2丁、60kg爆弾2発または30kg爆弾4発という構成でした。

結論

九四式水上偵察機は、その長い運用期間と優れた性能から、日本海軍にとって重要な水上機となりました。当時の技術水準を総合的に反映した機体であり、多くの作戦に貢献しました。

もう一度検索