宗廟 (ソウル特別市)

宗廟（チョンミョ）：朝鮮王朝の魂が息づく場所

宗廟は、ソウル特別市に位置する朝鮮王朝（李氏朝鮮・大韓帝国）の皇室祖先を祀る神聖な場所です。1995年12月、その文化的価値が認められ、ユネスコの世界遺産（文化遺産）に登録されました。ここでは、朝鮮・韓国の歴代国王、王妃、そして国家に貢献した功臣たちが祀られています。

建築美と精神性

宗廟の建築は、簡素でありながらも荘厳な雰囲気を醸し出しています。主要な建造物は以下の通りです。

正殿: 宗廟の中心となる建物で、最も西側に位置する太祖をはじめ、徳の高い政治を行ったとされる19人の王と、その妃たちの位牌、計49位が安置されています。各部屋の扉である「板門（パンムン）」は、祭礼の時以外は固く閉じられています。板門には隙間があり、これは魂が自由に出入りし、内部の湿度を調整するためと言われています。
永寧殿: 1421年、第2代国王である定宗（チョンジョン）の位牌を祀るために建てられた別廟です。初代王である太祖李成桂の4世代前までの祖先で、国王を追贈された穆祖・翼祖・度祖・桓祖、そしてその妃たちの位牌など、没後に位を贈られた王と妃の位牌、計34位が安置されています。
功臣堂: 李氏朝鮮の功臣83人を祀る場所です。
斎室: 王が沐浴し、祭儀の準備をする場所です。
典祀庁: 祭器や祭具を保管する倉庫です。
楽工庁: 祭祀で音楽を奏でる楽師たちの待機場所です。

歴史

宗廟は、李成桂が漢陽（現在のソウル）に遷都した1394年12月に着工され、翌1395年9月に完成しました。しかし、1592年に豊臣秀吉による侵略の際、日本軍がソウルを占領した際に破壊されてしまいました。その後、1608年に再建され、現在に至ります。現在も、大韓帝国の皇室である全州李氏の宗家によって祭祀が執り行われています。また、宗廟は韓国の史跡125号にも指定されています。

宗廟祭礼祭

毎年5月には、全州李氏一族が集まり、宗廟祭礼祭が執り行われます。この儀式は、その文化的価値が非常に高く評価され、無形文化遺産保護条約の発効以前の2001年に「傑作の宣言」（第1回）がなされ、「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に掲載されました。そして、2009年9月には正式に無形文化遺産として登録されました。

世界遺産としての価値

宗廟は、以下の世界遺産登録基準を満たし、登録されました。

(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

宗廟は、朝鮮王朝の歴史と文化を今に伝える貴重な遺産です。その静寂な空間は、訪れる人々に深い感動と省察を与えてくれます。

位牌配置

正殿
永寧殿
正中
西夾
東夾

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