宗田一

宗田一（そうだ はじめ）は、1921年3月1日に新潟県寺泊（現在の長岡市）で生まれ、1996年7月7日に生涯を閉じた、日本の医史学者です。

人物

1941年に（旧制）官立金沢医科大学薬学専門部（現在の金沢大学医薬保健学域薬学類）を卒業後、薬学史と医史学の研究に深く携わりました。その専門知識と研究への情熱は、日本医史学会の常任理事、野間科学医学研究資料館の理事といった要職を歴任する中で発揮されました。

宗田一の研究は、単なる過去の知識の探求に留まらず、現代医療の発展にも深く貢献しています。彼の学術的な功績は、日本の医学史研究において重要な位置を占めています。

宗田文庫

宗田一が収集した「宗田文庫」は、国際日本文化研究センターに所蔵されています。この文庫は、医学史・薬学史に関する書籍や図版資料を中心に構成された、日本医療文化史における貴重なコレクションです。

宗田文庫の最大の特長は、その網羅性と質です。多岐にわたる資料が体系的に収集されており、江戸時代以前の日本の医療に関する詳細な知識や文化を今に伝えています。これらの資料は、研究者だけでなく、歴史や文化に興味を持つ一般の方々にとっても、非常に価値のあるものです。また、文庫の目録は作成されており、国際日本文化研究センターのウェブサイトを通じて、その内容を容易に検索することができます。

著作

宗田一は、その生涯を通じて数多くの著作を世に送り出しました。以下に代表的なものを紹介します。

「江戸時代の科学器械 」（藪内清・宗田一共編集、1964年）
江戸時代の科学技術に関する貴重な資料をまとめた書籍で、当時の科学器械の詳細な記述と図版が特徴です。
「日本製薬技術史の研究」 (1965年)
日本の製薬技術の歴史を深く掘り下げた研究書で、日本の製薬技術の変遷を詳細に考察しています。
「近代薬物発達史」 (1974年)
近代における薬物の発達史を詳細に記述した書籍であり、薬学の進歩に貢献しました。
「日本の名薬」（1981年、2001年）
日本の伝統的な名薬に焦点を当て、その歴史的背景や薬効について解説した書籍で、一般読者にもわかりやすい内容です。
「健康と病の民俗誌 : 医と心のルーツ（1984年）
民俗学的な視点から健康と病を考察し、伝統的な医療や健康観を深く探求した書籍です。
「医学近代化と来日外国人」（ 宗田一、長門谷洋治、蒲原宏、石田純郎共著、1988年）
日本の医学近代化における来日外国人の役割を明らかにした研究書で、国際的な視点から日本の医学史を考察しています。
「医療と神々: 医療人類学のすすめ」（宗田一、池田光穂共著、1989年）
医療人類学の視点から、医療と宗教の関係を考察した書籍で、文化人類学的なアプローチが特徴です。
「図説・日本医療文化史」（1989年．1994年再版）
日本の医療文化史を豊富な図版とともに解説した書籍で、幅広い読者層に支持されています。
「渡来薬の文化誌 ― オランダ船が運んだ洋薬」（1993年）
江戸時代にオランダ船によって日本に伝えられた洋薬の歴史と文化を詳細に描いた書籍です。

これらの著作は、宗田一の深い知識と研究成果を反映しており、日本の医学史や薬学史の研究に不可欠な文献となっています。

受賞歴

宗田一は、その長年の研究活動が評価され、1990年に矢数医史学賞を受賞しました。この賞は、医学史研究における優れた業績を称えるものであり、彼の功績を象徴するものです。

まとめ

宗田一は、医史学者として日本の医学史と薬学史の研究に多大な貢献をしました。彼の収集した「宗田文庫」や数々の著作は、現代の医学研究においても重要な資源となっています。宗田一の業績は、これからも多くの研究者や医学に関わる人々にとって、貴重な遺産として受け継がれていくでしょう。

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