定永両一

定永両一：日本の鉱物学・結晶学を牽引した巨人

定永両一博士(1920年6月25日-2002年1月27日)は、20世紀後半の日本の鉱物学・結晶学を代表する科学者の一人です。大阪で生まれ、東京帝国大学理学部鉱物学科を卒業後、同大学で研究・教育活動に携わり、その卓越した業績により、日本の鉱物学・結晶学の発展に多大な貢献を果たしました。

学術への貢献：

博士の専門は結晶学と鉱物学で、特に結晶構造の解明、結晶対称性に関する理論的研究に大きな功績を残しました。主な研究業績としては、相転移の前駆現象の発見、結晶対称理論と回折対称の上昇の発見、そして結晶亜群の理論の構築などが挙げられます。これらの業績は、結晶学の基礎理論を深化させ、多くの後続研究者たちに大きな影響を与えました。

博士の研究は理論に留まらず、実践的な成果にもつながっています。1984年には、愛媛県上島町弓削島で発見された新鉱物に、博士の功績を称え「カリ（第一鉄）定永閃石」と命名されました。これは、博士の研究が鉱物学の新たな発見に貢献したことを示す象徴的な出来事です。

教育者としての貢献：

研究活動と並行して、博士は東京大学で長年教鞭をとり、多くの優秀な人材を育成しました。指導を受けた学生たちは、現在、日本の鉱物学・結晶学界の第一線で活躍しており、博士の教育的功績は計り知れません。

学会活動：

博士は、日本鉱物学会や日本結晶学会などの学会活動にも積極的に参加し、1972年から1974年には日本鉱物学会会長、1976年から1977年には日本結晶学会会長を務めました。学会運営に貢献する一方、これらの活動を通して、日本の鉱物学・結晶学コミュニティの活性化に大きく寄与しました。

出版物：

博士は数多くの論文を発表し、その研究成果を広く世界に発信しました。代表的な論文として、空間群論に関する一連の論文や、回折現象に関する論文などがあります。これらの論文は、現在でも結晶学研究の重要な参考文献として引用されています。また、共著として『X線結晶学』『実験鉱物学』といった教科書を執筆し、後進の育成にも貢献しました。単著として発表された『結晶学序説』は、今日でも結晶学を学ぶ学生にとって貴重な入門書となっています。

受賞と栄誉：

博士の多大な貢献は、数々の賞や栄誉によって認められました。1981年には東京大学を定年退官後、東京大学名誉教授の称号を授与され、同年、日本学士院会員に選出されました。1990年には、勲二等瑞宝章を受章しました。これらの栄誉は、博士の研究、教育、そして学会活動における卓越した業績を物語っています。

結び：

定永両一博士は、その生涯を通して、日本の鉱物学・結晶学の発展に多大な貢献を果たしました。理論研究、実践的研究、教育活動、そして学会活動において卓越した業績を残した博士の功績は、現代の鉱物学・結晶学研究の礎となっています。博士の残した研究成果と教育の精神は、これからも多くの研究者や学生たちに影響を与え続け、日本の科学の発展に寄与し続けるでしょう。

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