定永閃石

定永閃石：発見から分類変更までの歴史と特徴

定永閃石(Sadanagaite)は、ケイ酸塩[鉱物]]の一種で、単斜晶系に属します。化学組成は[Na][Ca2][Mg3Al2(OH)2と表され、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、酸素、水酸基から構成されています。黒色から黒茶色の短柱状結晶として産出するのが一般的です。

定永閃石グループと組成

定永閃石は、13種類を含む定永閃石グループに属する[鉱物]]の一つです。グループ内鉱物の基本組成式は[A][Ca2][M12+3M23+2W2と表され、A、M1、M2、Wの位置に様々な陽イオンやアニオンが入ることで、多様な種類が生じます。2012年の改訂では、定永閃石はAにナトリウム、M1にマグネシウム、M2にアルミニウム、Wに水酸基を持つものとして定義されています。マンガンが不純物として含まれる場合もあります。

産出地

定永閃石は、主に以下の地域で発見されています。

岐阜県揖斐川町春日鉱山（原産地）
岐阜県恵那市河合鉱山
ミャンマーマンダレー管区モーゴウ
ロシアウラル管区Ilmen Natural Reserve

発見と名称の変遷

定永閃石は、岐阜県揖斐川町春日鉱山で発見された新鉱物です。坂野靖行氏らによって、同じく春日鉱山で発見されたソーダ金雲母と共に、2003年に独立種として承認されました。鉱物名は、東京大学の定永両一氏に因んで命名され、定永閃石グループの名称の由来にもなっています。

しかし、定永閃石の名称は複雑な経緯を辿っています。発見時の登録名称は「苦土定永閃石(Magnesiosadanagaite)」でしたが、これは1997年の角閃石グループ改訂に基づく名称でした。2012年の改訂により現在の名称に変更されています。さらに、1980年代には、現在の「カリ第一鉄定永閃石(Potassic-ferro-sadanagaite)」や「第一鉄定永閃石(Ferro-sadanagaite)」に「定永閃石」の名称が使われていました。そのため、現在の定永閃石は、定永閃石グループで最初に発見された鉱物とは異なる鉱物種であり、グループ内では4番目の発見となります。この名称の重複や変更は、定永閃石グループの鉱物を取り扱う際には注意が必要です。かつて使われていた「苦土定永閃石」は、現在ではマグネシウムを主とする組成のものを「定永閃石」と定義しているため、使用されなくなっています。

定永閃石の特徴

定永閃石は、他の定永閃石グループの鉱物と肉眼での区別は困難です。多くの場合、黒色から黒茶色の短柱状結晶として産出します。詳細な結晶構造や化学組成の分析が必要となります。

まとめ

定永閃石は、その発見から命名、そして分類体系の変更による名称の変遷まで、鉱物学における興味深い歴史を持つ鉱物です。日本、特に岐阜県での発見は、日本の鉱物学研究において重要な位置を占めています。今後も、定永閃石の研究は、鉱物学の発展に貢献していくでしょう。 定永閃石グループの他の鉱物との比較研究も、今後の課題と言えるでしょう。 また、産出地の地質学的環境との関連性についても、より深い理解が求められます。

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