宜湾朝保

琉球王国末期の政治家・歌人、宜湾朝保

宜湾朝保（ぎわん ちょうほ）は、1823年（道光3年）に生まれ、1876年（光緒2年）に没した、琉球王国末期の著名な政治家であり、歌人です。当時の正式な呼称は宜湾親方朝保で、琉球の五偉人の一人として知られています。小禄御殿の支流である向氏宜湾殿内の12世として、首里で生まれました。唐名は向有恆です。父は尚育王時代の三司官であった宜野湾親方朝昆（唐名は向廷楷）です。

13歳で父を亡くし家督を継ぎ、宜野湾間切を領しました。当初は宜野湾の家名を名乗っていましたが、1875年（明治8年）に尚泰王の次男・尚寅が宜野湾間切を賜り宜野湾王子と称するようになったため、宜湾と改名しました。

朝保は和漢洋の学問に通じ、特に英語に堪能でした。接貢船修甫奉行、異国船御用係、学校奉行、系図奉行を経て三司官に就任しました。当時、琉球は清、フランス、アメリカ、オランダと通商し、国事多端な時期でしたが、朝保は献身的に尚泰王を補佐し、信任を得ました。

朝保はヤマト（日本）へ6度、清へ2度派遣されました。また、伊江王子朝直の副使として東京へ赴き、琉球藩を設け尚泰を藩王とする命を受けましたが、帰琉後、強い排斥を受け隠退しました。

幕末には、鹿児島に使し、歌人の八田知紀に和歌を学びました。帰琉後、別業を営み、悠然亭と名付け、自らは松風斎と号して歌を講じました。後に福崎季連と協力し、琉球歌壇の基礎を築きました。1872年（明治5年）には、東京滞在中に吹上離宮の歌会に陪席し、「水石契久 動きなき御世を心のいはかねにかけてたえせぬ滝の白糸」と詠み、天皇からお褒めの言葉を賜りました。

また、一説には、琉球の代表的な歌謡である上り口説、下り口説、四季口説は朝保の作であるとも言われています。

朝保は維新慶賀使として東京へ上京した際、正使の伊江王子朝直、賛議官の喜屋武親雲上朝扶と共に、1872年（明治5年）9月12日に新橋～横浜間の鉄道開業式典で蒸気機関車に乗車しています。

1915年（大正4年）、朝保は従四位を追贈されました。著書には、『遺稿松風集』、『沖縄三十六歌仙』、『沖縄集』、『琉球解釈』、『上京日説』、『宜湾朝保書』などがあります。

伊波普猷と真境名安興の著書『琉球の五偉人』（1916年）において、朝保は琉球の五偉人の一人として選ばれています。

参考文献:

• - 『沖縄県姓氏家系大辞典』角川書店、平成4年 ISBN 4040024702

関連項目:

• - 琉歌
• - 向氏宜野湾殿内

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