宝塚市歌

宝塚市歌について

「宝塚市歌」は、兵庫県宝塚市が制定した公式な市歌であり、その作詞は西川好次郎、作曲は酒井協によります。この曲は1954年4月1日に、宝塚市が川辺郡宝塚町と武庫郡良元村の合併によって新たに発足したことを祝うために制定されました。市章のデザインと並行して、226篇の応募作から西川の作品が選ばれ、作曲には酒井が依頼されました。

制定の背景

宝塚市の市歌は、発足当日の美しい市章と共に発表されました。この歌詞を手がけた西川好次郎は、和歌山県の日高郡美山村に在住しており、過去に「和歌山県民歌」の入選経験がある実力派の詩人です。作曲を担当した酒井協も、兵庫県内で数多くの市歌を手がけており、宝塚市に限らず、同年に市制を施行した川西市や三木市、高砂市でも彼の作品が採用されています。

初めての演奏は1954年4月21日に行われ、宝塚音楽学校の生徒50名による斉唱が実施されました。その後、制定から10年ほどは市内の様々な行事で頻繁に演奏されていましたが、1970年代以降、その機会は次第に減少し、現在では宝塚歌劇団の愛唱歌「すみれの花咲く頃」が市を代表する歌として広く知られるようになりました。

楽譜の誤りと復元

2009年、あるアマチュア合唱団の指導者が市歌の斉唱を指揮した際、現在の旋律が制定時のものとは著しく異なることに気づきました。そこで、市役所から提供された楽譜を検証したところ、多数の誤りが見つかりました。実際、制定時には神戸新聞や市役所の広報誌に掲載された楽譜が存在しましたが、作曲者である酒井の自筆の原本は失われており、楽譜は職員によって誤って転写されていたことが判明しました。例えば、当初の「メゾフォルテ」という指示が「メゾピアノ」に変更されていたり、音符のすべてが1音低くされているなど、数々の改変が行われていました。

市では、過去に市歌の編曲を担当した中元清純の協力のもと、この誤りを訂正し、制定当時の楽譜を復元するプロジェクトを進めました。さらに、宝塚市立中央図書館が発行した『宝塚大事典』にも正しい楽譜が掲載されています。

市歌の再活用

2010年代初頭からは、市役所の新年の仕事始めや、毎年の「誓いの日」に市歌を斉唱する機会が復活しました。また、2014年からは、廃止された「赤とんぼ」の代わりにごみ収集車が市歌を流す取り組みも開始され、市民の耳に触れる機会が増えています。2017年には市議会において手話言語条例が成立したことで、手話に対応した市歌が新たに作成されるなど、多様な取り組みも進められています。

このように、宝塚市歌は制定から現在まで、さまざまな歴史を経て市民に愛され続けており、近年では復元や新たな活用方法により、その存在感が再び高まっています。

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