実効輻射電力

実効輻射電力とは

実効輻射電力（Effective Radiated Power: ERP）とは、特定の方向に放射される電波の電力の強さを表す指標です。これは、送信機からアンテナに供給される電力と、アンテナの指向性（特定の方向に電波を強く放射する能力）を考慮に入れたもので、電波の到達範囲や通信品質を評価する上で重要な概念です。

放送局の送信電波や無線LANの電波の強さを示す際など、電波を利用する様々な場面で用いられます。実効輻射電力の値を把握することで、電波の伝搬状況や通信システムの性能をより正確に理解することができます。

実効輻射電力とEIRP

実効輻射電力に関連する用語として、EIRP（Equivalent Isotropic Radiated Power：等価等方輻射電力）があります。EIRPは、アイソトロピック・アンテナ（全方向に均等に電波を放射する理想的なアンテナ）を基準とした場合の電力を指します。一方、ダイポールアンテナ（特定の方向に電波を強く放射するアンテナ）を基準とした電力をERPと呼び、日本語では「実効輻射電力」と訳されます。つまり、EIRPとERPは、基準とするアンテナの種類が異なるだけで、どちらも電波の放射強度を表す指標であるという点は共通しています。

実効輻射電力の表記

「輻」という漢字が常用漢字ではないため、「実効放射電力」と表記されることもあります。どちらの表記も意味は同じですが、本記事では「実効輻射電力」の表記で統一します。

電波法における定義

日本の電波法では、実効輻射電力と等価等方輻射電力について、以下のように定義しています。

実効輻射電力: 空中線に供給される電力に、与えられた方向における空中線の相対利得を乗じたもの。
等価等方輻射電力: 空中線に供給される電力に、与えられた方向における空中線の絶対利得を乗じたもの。

ここで、相対利得とは、特定のアンテナを基準とした場合の利得を指し、絶対利得とは、アイソトロピック・アンテナを基準とした場合の利得を指します。つまり、電波法の定義においても、基準とするアンテナの違いによって、実効輻射電力と等価等方輻射電力とが区別されています。

実効輻射電力の重要性

実効輻射電力は、電波を利用する様々なシステムにおいて重要な役割を果たしています。例えば、無線通信システムの設計においては、送信電力を適切に設定し、アンテナの指向性を考慮することで、効率的な通信を実現することができます。また、放送システムにおいては、実効輻射電力を適切に調整することで、広い範囲に安定した電波を届けることができます。

このように、実効輻射電力は電波の利用を最適化する上で不可欠な概念です。電波に関する技術を理解する上で、実効輻射電力についての知識は非常に重要となります。

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