ダイポールアンテナ

ダイポールアンテナの詳細解説



ダイポールアンテナ（またはダブレットアンテナ）は、2本の直線状の導線（エレメント）を、給電点から左右対称に配置したアンテナです。そのシンプルな構造から、線状アンテナの基本として広く利用されています。特にアマチュア無線では、自作アンテナの定番として知られています。理論上の利得は2.14dBi（または2.15dBi）です。

構造と特徴



ダイポールアンテナは、通常、水平に設置されます（水平ダイポール）。しかし、設置スペースの制約や、電波の打ち上げ角度を調整するために、傾斜（スローパーダイポール）や垂直（垂直ダイポール）に設置されることもあります。

エレメントの長さ



各エレメントの理想的な長さは、1/4波長（合計で1/2波長）です。ただし、実際には、インピーダンス整合のために1/4波長よりも少し短くすることが一般的です。この短縮率は、エレメントの太さによって異なり、太いほど短縮率は小さくなります。これは、アンテナ線中の電波の伝搬速度が空中よりも遅いためです。アンテナの共振周波数は、エレメントの長さや周囲の環境によって変化するため、実際の製作では、少し長めに作ってからSWR（定在波比）が最小になるように調整します。

インピーダンス



2本の導線の角度が180度の場合、入力インピーダンスは約73Ωになります。この角度を120度にした場合、約50Ωとなり、50Ω系の同軸ケーブルを直接接続できます。このV字型のダイポールアンテナは、V型ダイポールアンテナと呼ばれます。アマチュア無線家の間では「バンザイアンテナ」と呼ばれることもあります。また、これを逆さにしたものをインバーテッドVアンテナ（または逆Vアンテナ）といいます。

バラン（平衡-不平衡変換器）



ダイポールアンテナは平衡型、同軸ケーブルは不平衡型であるため、適切に給電するためにはバランが必要です。バランを省略すると、同軸ケーブルの表面がアンテナの一部として機能し、指向性や利得が低下する可能性があります。しかし、影響が軽微なため、簡易的な用途では省略されることもあります。

指向性



ダイポールアンテナは、エレメントに垂直な方向に最も強く電波を放射し、エレメントに平行な方向にはほとんど放射しません。この指向性を図示すると、「8」の字のような形になります。地面近くに設置した場合、地面の影響で電波の打ち上げ角度が変化します。

小型化



エレメントの途中にコイル（ローディングコイル）を挿入したり、エレメントを折り返すことで、アンテナの物理的な長さを短縮できます。ローディングコイルは、物理的な長さを短縮しつつ、電気的な長さを元の長さに近づける役割があります。

多周波化



複数のエレメントを並行に設けたり、エレメントの途中にLC並列共振回路（トラップ）を設けることで、複数の周波数帯で動作させることができます。アマチュア無線家は、エレメントを切断・接続することで多周波化を試みることがあります。ギボシ端子を使うと、効率的に切断と接続を行えます。このようなアンテナをギボシダイポールアンテナと呼びます。

応用



ダイポールアンテナは、八木・宇田アンテナの放射器として利用されたり、垂直に設置してブラウンアンテナとして利用されたりします。また、ダイポールアンテナの原理を応用した様々な種類のアンテナが存在します。

応用例




まとめ



ダイポールアンテナは、シンプルな構造でありながら、様々な応用が可能な汎用性の高いアンテナです。アマチュア無線家にとっては、自作アンテナの入門として、また、様々な実験を行うための基礎として、欠かせない存在と言えるでしょう。

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