客扱終了合図

客扱終了合図とは

客扱終了合図とは、列車が駅を発車する際に、駅係員が車掌に対して、旅客の乗降が完了したことを知らせる合図のことです。この合図を受けて、車掌は列車のドアを閉めます。ワンマン運転の列車では、運転士に対して合図が送られます。

この合図は「客終」と略されることもあり、事業者によっては「乗降終了合図」や「戸閉合図表示機」など、異なる名称で呼ばれることもあります。また、特急列車で検札のためにドアカットを行う際にも使用されることがあります。

客扱終了合図の歴史

鉄道が開業した当初は、駅員が手動でポイントを操作し、列車の進路を確保していました。その後、駅員が発車可の合図を列車に送ることで、駅の責任のもとで列車は出発していました。1980年代に入ると、列車集中制御装置が導入され、多くの駅で発車業務が自動化されました。これにより、駅員の立ち番の必要性は薄れましたが、当時は駅の放送設備や案内表示が十分でなかったため、乗換案内などを目的に主要駅では駅員が配置され、合図を送っていました。

2000年頃になると、自動放送設備の充実、ホーム監視用ITVの設置、そして乗客自身がスマートフォンなどで情報を入手できるようになったことで、ホームでの案内は不要となりました。そのため、多くの駅で駅員の立ち番は廃止されました。現在では、ホームが湾曲していて見通しが悪い駅での、車掌のドア閉めを補助する役割が大きくなっています。

2017年頃からは、ホームドアの設置が進み、JRグループ、東京メトロ、東急電鉄などでは、湾曲したホームでも立ち番や監視員を廃止する動きが広がっています。客扱終了合図は、通勤時間帯の混雑対策や、見通しの悪い駅での車掌の補助として、その役割を変化させています。

作業手順

客扱終了合図の手順は、鉄道会社によって異なりますが、ここではJRグループの例を元に解説します。

新幹線の場合

1. 進路と架線に異常がないか確認します。
2. 列車到着時に、付着物や前照灯の異常がないか確認します。
3. 列車が駅に到着後、車掌がドアを開けます。
4. 到着放送、発車放送、音楽が終了後、駅員がホームの安全を確認します。
5. 乗客の乗降が終了したことを確認後、駅員は笛を吹いて合図を送り、客扱終了ブザーを鳴らします。
6. 車掌が合図を確認後、ドアを閉めます。
7. 車掌と駅員は、列車の出発を監視します。
8. 列車発車後、進路と架線に異常がないか確認します。

客扱終了合図ブザーは、通常は「長音一声」（ブーという音が5秒以上）で鳴らされます。ブザーが故障した場合は、昼間は赤色の旗を高く掲げ、夜間や地下駅では白色灯を高く掲げて合図を行います。

JR在来線の場合

1. 進路と架線に異常がないか確認します。
2. 列車到着時に、付着物や前照灯の異常がないか確認します。
3. 列車が駅に到着後、車掌がドアを開けます。
4. 車掌（一部駅では駅員）が発車ベルを鳴らし、発車放送を終了させます。
5. 駅員が乗客の乗降を確認し、客扱終了合図を車掌に送ります。
6. 車掌は合図を確認後、ドアを閉めます。一部駅では、荷物の挟まりに対応するための再開閉合図があります。
7. 車掌と駅員は、列車の出発を監視します。
8. 列車発車後、進路と架線に異常がないか確認します。

JR西日本では、2010年12月1日から、客扱終了表示は運転業務の資格がない者でも行えるようになりました。方法は上記と同様ですが、腕を高く上げて円を描く動作でも表示できます。

客扱終了合図の方法

客扱終了合図には、以下の方法が用いられます。

客扱終了合図器: 白色灯の点灯とベルまたはブザーの長音一声。
閉扉時機合図器: ランプの明滅。ベルやブザー音はなし。
旗または合図灯: 新幹線の場合と同様。

カーブなどで乗降状況が見えにくい駅では、終日客扱終了合図が出されます。また、ラッシュ時や終電時にも駅員によって合図が出されます。

その他の鉄道会社

1. 駅員が到着監視を行います。
2. 列車が駅に到着後、車掌がドアを開けます。
3. 発車放送やベルが終了後、駅員が乗客の乗降が完了したことを確認し、旗や合図灯で車掌に客扱終了合図を送ります。
4. 車掌はホーム監視モニターで確認後、ドアを閉めます。
5. その後、駅員からの発車合図を受け、車掌は運転士に合図を送って列車は出発します。
6. 車掌と駅員は出発監視を行います。

駅員からの合図が直接確認できないホームでは、装置を使って合図を送る場合があります。この場合、

乗降が完了し、ドアを閉めても良いときは「○」（または「ト」）
ドアを閉めた後に再開閉が必要なときは「×」（赤丸表示や警報ブザーとともに「ト」を使う所も）
ドアを閉めて発車しても良いときは「●」（または「○」）

のように表示されます。

駅によっては、放送で「降車終了」とアナウンスされることがあります。

日本国外での客扱終了合図

日本国外でも同様の合図が行われています。フライ旗を使用しているのは、原則として日本、台湾、タイのみで、韓国、インドネシア、イギリス、フランスなどでは、丸いプレートが付いた棒を高く掲げることで合図を送ります。

バスにおける客扱終了合図

バスでも同様の合図が行われることがあります。例えば、西川口駅からのバスでは、駅階段下とバス横で、駅員がリレー式で手合図による乗降終了合図を行っています。また、千歳烏山駅のバスロータリーでは、交通整理を兼ねた職員が合図を送ります。黒部ダムトロリーバスでは、フライ旗が使われています。

客扱終了合図は、鉄道やバスの安全運行に不可欠なシステムであり、乗客の安全を守る上で重要な役割を果たしています。

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