室井鐵衛

室井鐵衛（むろい てつえ）

室井鐵衛は、1919年9月6日に生まれ、2011年4月5日に逝去した日本の商学者です。栃木県出身であり、慶應義塾大学経済学部を卒業後、時事通信社や中央調査社での勤務を経て、広告業界へと進みました。

経歴

室井鐵衛は、初期のキャリアにおいて、欧米の市場調査手法を日本に導入する上で重要な役割を果たしました。その後、株式会社大広にてマーケティング局長、常務取締役を歴任し、広告の近代化と発展に尽力しました。実務の第一線から退いた後は、研究者としての道を歩み始め、千葉商科大学や東京国際大学大学院で教鞭を執り、後進の育成に力を注ぎました。また、1993年から1999年まで株式会社宣伝会議の取締役会長を務めるなど、業界の発展にも大きく貢献しました。特に、エリアマーケティングの分野においては、米田清紀と並び第一人者として知られ、その理論と実践は、今日のマーケティング戦略においても重要な基盤となっています。

エリアマーケティングの提唱

室井鐵衛は、単に製品を市場で販売するだけでなく、消費者の生活全体を捉え、そのニーズに応じた需要を創造することに焦点を当てました。彼は、エリアマーケティングを「消費者の生活行動空間の基盤としての地域を、市場理解の前提として、消費者のライフ・システムと、その生活ニーズに対応して、企業の対市場活動の効果を創造し、維持し、変化させるマーケティング」と定義しました。この定義は、地域ごとの特性を考慮したマーケティング戦略の重要性を示しており、彼の研究が現代のマーケティング戦略に与えた影響は計り知れません。

主な研究分野

室井鐵衛は、エリアマーケティング、広告、マーケティング、マーケティング・リサーチなど幅広い分野で研究を行いました。特に、エリアマーケティングにおいては、地域ごとの消費者の行動パターンやニーズを分析し、効果的なマーケティング戦略を構築するための理論を提唱しました。

著書

室井鐵衛は、数多くの著書を執筆しており、その研究成果は広く社会に共有されています。主な著書には以下のようなものがあります。

『マーケティングにおける消費者』ダヴィッド社、1959年
『日本の商圏―新しいマーケティングマップ』ダイヤモンド社、1971年
『市場再開発の技術―ニュー・マーケティングの知識と実務―』ダイヤモンド社、1974年（米田清紀と共著）
『新・日本の商圏―地域の生活風土と日本のマーケティング―』ダイヤモンドセールス編集企画、ダイヤモンド社[発売]、1976年
『日経文庫;283 商圏の知識』日本経済新聞社、1979年
『管理ポイントシリーズ 広告の管理ポイント』税務経理協会、1980年9月
『商業体制の理論―現代商業の位置づけとマーケティングの展開―』税務経理協会、1982年10月
『エリア・マーケティング』中央経済社、1983年4月
『行動空間へのマーケティング―エリア戦略の論理―』誠文堂新光社、1985年9月
『商業体制の理論―現代商業の位置づけとマーケティングの展開』〔改訂版〕税務経理協会、1990年6月
『生活起点発想とマーケティング革新』国元書房、1991年3月（井関利明と共著）
『商業体制の理論―現代商業の位置づけとマーケティングの展開―』〔3訂版〕税務経理協会、1997年7月
『マーケティングの視座―課題と提言― Marketing inspection』芙蓉書房出版、2007年8月

これらの著作は、マーケティングを学ぶ上で貴重な資料となっており、彼の理論と実践は、現代のマーケティング戦略にも大きな影響を与え続けています。

死去とその後

室井鐵衛は2011年4月5日に老衰のため逝去しましたが、彼の業績は、日本のマーケティング史において永遠に語り継がれるでしょう。同年5月17日には、株式会社宣伝会議の主催で「お別れの会」が開催され、多くの関係者がその功績を偲びました。

関連項目

エリア・マーケティング
米田清紀
井関利明

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