ダヴィッド社

株式会社ダヴィッド社：日本の出版界を彩る老舗出版社

1948年、東京都新宿区に設立された株式会社ダヴィッド社は、日本の出版業界において重要な役割を果たしてきた出版社です。創業者の遠山直道氏は、当時日興證券の社長を務めていた遠山元一の三男であり、東京大学経済学部卒業後にダヴィッド社を設立、代表取締役社長に就任しました。

ダヴィッド社の歴史は、戦後の日本の出版文化発展と深く関わっています。同社は、世界文学の翻訳出版に積極的に取り組み、J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の日本初訳となる『危険な年齢』をはじめ、多くの名著を日本語で紹介しました。河上徹太郎の『文学手帖』、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの書簡集『モオツァルトの手紙』、ダフネ・デュ・モーリアの作品など、多様なジャンルの書籍を出版することで、日本の読者層の裾野を広げる貢献をしました。

さらに、ダヴィッド社はフランス文学にも力を入れており、フランソワーズ・サガンの『悲しみよこんにちは』など、フランス文学の名作を数多く出版しています。これらの翻訳出版は、日本の読者にとって、世界文学への理解を深める上で重要な役割を果たしました。

出版活動の幅は、文学にとどまりません。同社は広告や写真、デザインなどの専門書も多数出版しています。これらの専門書は、それぞれの分野の専門家や学生にとって貴重な情報源となっています。例えば、『編集ハンドブック』や『写真技術ハンドブック』、『広告のレイアウト』などは、長年にわたって改訂を重ねられ、業界標準として広く利用されています。

1973年、創業者の遠山直道氏はフランスで飛行機事故により急逝されました。47歳という若さでその生涯を終えた遠山氏の功績を称え、翌年には追悼本『遠山直道』が刊行されました。この出来事は、ダヴィッド社の歴史において大きな転換点となりましたが、同社はその後も出版活動を継続し、日本の出版業界に貢献し続けています。

近年では公式ウェブサイトを開設していないものの、ダヴィッド社が出版してきた書籍は、日本の出版文化に多大な影響を与え続けています。数多くの翻訳書や専門書を通じて、世界文学や専門知識を日本の読者に伝え、日本の出版界発展に貢献してきたダヴィッド社の存在は、これからも日本の出版文化史において重要な位置を占めるでしょう。

主な出版物（抜粋）

J・D・サリンジャー『危険な年齢』（『ライ麦畑でつかまえて』の日本初訳）
河上徹太郎『文学手帖』
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト『モオツァルトの手紙』
ダフネ・デュ・モーリア『真実の山』『林檎の木』
ブドウ・スワニーゼ『叔父スターリン』
ヴァン・ウィック・ブルックス『アメリカ文学史 1800-1915』
ポール・クローデル/アンドレ・ジイド『愛と信仰について 往復書簡』
フランソワーズ・サガン『悲しみよこんにちは』
エドウィン・ミュアー『小説の構造』
金素雲『恩讐三十年』
イーゴリ・ストラヴィンスキー『音楽とは何か』
ロバート・キャパ『ちょっとピンぼけ』
ダヴィッド社デザイン編集室編『編集ハンドブック』
パーシー・ラボック『小説の技術』
フランソワ・モーリャック『小説と作中人物』
長與善郎『泡のたはごと』
奥むめお『あけくれ』
白洲正子『韋駄天夫人』
ジョルジュ・バタイユ『エロチシズム』
小林利雄『アイデアの旅』
山名文夫『広告のレイアウト』『山名文夫新聞広告作品集』『体験的デザイン史』
脇リギオ『写真技術ハンドブック』『写真の特殊表現技法』『リゴグラム <幻想の風景>』
石山彰編『服飾辞典』
新井静一郎『ある広告人の日記』
遠山直道追想録刊行会編『遠山直道』
土門拳『写真作法』『写真批評』『写真随筆』
長沢節監修『スタイル画の世界』
野村保惠『校正ハンドブック』
新井一『シナリオの基礎技術』『シナリオの基礎Q&A』
寺崎繁雄『広報写真ハンドブック』
* 田山力哉『映画小事典』

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