室町殿日記

『室町殿日記』の概要

『室町殿日記』は、日本の室町時代から織豊期にかけての軍事や政治、一般の世相に関する事柄を記録した240余の章から成る軍記です。この文献は編者である楢村長教によってまとめられました。

編纂の背景

この記録の成立は、序文によると前田玄以の要請によるもので、彼が求めた情報をもとに編纂が行われました。具体的には、京都の検断職である猶村市右衛門尉長高、脇屋惣左衛門尉貞親の日記、幕府の料所沙汰人であった三好日向守義興の日記、将軍の祐筆である鳥飼如雪斎の書簡及び日記がベースとなっており、文禄年間に追加された風説も含まれています。

『室町殿日記』が成立したのは、前田玄以の死去（1602年）や足利義昭の臨終の記事が含まれていることから、慶長年間（1596年-1615年）頃であると考えられています。

史的価値とその評価

この文献は近世において、史実を記録した実記として広く認識され、様々な随筆などで引用されてきました。しかし、いくつかの記述には誤りが含まれています。例えば、足利義昭の死去した場所を大坂ではなく備後国深津と記していたり、義輝の暗殺を三好長慶の仕業とするなど、史実と合致しない部分も見受けられます。

にもかかわらず、『室町殿日記』は戦国時代の徳政令や畿内の動乱、また当時の社会における「あぶれ者」の状況などを伝えており、史料としての価値を一概に否定することはできません。

『室町殿物語』の刊行

『室町殿日記』から78章が抜粋されて編纂された作品が『室町殿物語』です。この物語は1706年に貫器堂より出版され、選者は同じく楢村長教でありました。

脚注

この記録は当時の戦国時代の雰囲気や事象を詳細に表現しているため、歴史研究や文学研究における重要な資料となっています。学者や研究者たちは、『室町殿日記』を通じて当時の文化や社会状況をより深く理解しようと努めています。

参考文献

• - 笹川祥生 著『室町殿日記』
• - 日本古典文学大辞典編集委員会 編『日本古典文学大辞典』5巻（岩波書店，1984年）
• - 和田英道 著『室町殿日記』 （明治書院，1998年）

『室町殿日記』は、室町時代の歴史的な文献の価値を高める存在となっており、今後も研究が進められることでしょう。

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