宮久三千年

宮久三千年博士：日本の鉱物学・鉱床学を牽引した研究者

宮久三千年博士（1928年-1983年）は、日本の地球科学、とりわけ鉱床学と鉱物学において重要な足跡を残した研究者です。大分県に生まれ、旧制第七高等学校造士館を経て九州大学理学部地質学科を卒業。その後、九州大学大学院に進学し、木下亀城教授の指導の下で研鑽を積みました。1957年には愛媛大学文理学部助教授に就任、後に教授に昇進します。

九州から四国へ、そして鉱物愛好家への貢献

博士の研究は、卒業論文から一貫して、金属鉱床の調査研究に捧げられました。初期は九州地方、特に大分県尾平鉱床地域を主な研究対象とし、精力的に調査を行い、多くの論文を発表しました。愛媛大学への赴任後は、研究範囲が四国地方へと広がり、四国各地の金属鉱床の研究にも取り組みました。

博士の研究の特徴は、詳細な野外調査に基づいた正確な地質学的記述にあります。また、反射顕微鏡などの先端技術を駆使し、多くの新産鉱物や希産鉱物を発見・記載した点でも高い評価を得ています。その貢献は学術界にとどまらず、一般の鉱物愛好家への啓蒙活動にも及び、分かりやすい解説書などを執筆・出版しました。こうした活動は、鉱物学への関心を高め、広く普及させる上で大きな役割を果たしました。

新鉱物「宮久石」の命名

博士の功績を称え、2011年には大分県下払鉱山で発見された新鉱物が「宮久石(Miyahisaite, (Sr,Ca)2Ba3(PO4)3F)」と命名されました。これは、博士の研究人生と鉱物学への多大な貢献が、後世にまで影響を与え続けている証左と言えるでしょう。

主要な著書と論文

博士は、数多くの著書や論文を発表し、日本の鉱物学・鉱床学の発展に貢献しました。主な著書としては、『日本地方鉱床誌』（九州地方、四国地方）、『鉱物採集の旅』（四国・瀬戸内編、九州南部編）などが挙げられます。これらの著書は、今日でも鉱物学研究者や愛好家にとって貴重な資料となっています。また、数々の学術論文においても、詳細な観察記録と分析結果を基に、日本の鉱物資源の解明に大きく貢献しました。発表された論文には、九州地方、四国地方の金属鉱床に関するものだけでなく、道後温泉など周辺温泉・鉱泉水源に関する応用地質学的な研究成果も含まれています。

まとめ

宮久三千年博士は、長年にわたる地道な研究活動と、一般への啓蒙活動を通じて、日本の鉱物学・鉱床学の発展に多大なる貢献を果たしました。その業績は「宮久石」という形で永遠に記憶され、日本の地球科学史に燦然と輝く功績として後世に語り継がれていくことでしょう。彼の研究は、現在もなお、多くの研究者や愛好家に影響を与え続けており、日本の鉱物学界に与えた影響は計り知れません。 博士の残した著作や論文は、未来の研究者たちにとって、貴重な知恵と遺産となるでしょう。

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