宮井陸郎

宮井陸郎は、1940年に島根県で生まれ、2022年にその生涯を閉じました。彼の父親は夏目漱石研究家であった宮井一郎です。1960年代には「映像芸術の会」に参加し、自ら「現象野郎」と名乗り、「ユニットプロ」を主宰しました。この時期、彼はフーテンを集めたアングラ・サイケデリックショーを開催するなど、既存の枠にとらわれない活動を展開し、アンダーグラウンドシーンを牽引しました。

宮井は、拡張映画や環境映画といった新しい映像表現に取り組みました。ヌーヴェルヴァーグに影響を与えた「シネマ・ヴェリテ」の手法に注目し、2台のプロジェクターを駆使した代表作「時代精神の現象学」（1967年）を制作しました。この作品は、当時の映像表現に大きな影響を与えたと言われています。

また、宮井はプロデューサーとしても活動し、1974年には大丸ミュージアム（東京、神戸）での「アンディ・ウォーホル展」を企画しました。これらの活動を通じて、彼は映像の世界だけでなく、アートシーン全体に貢献しました。

1976年、宮井はインドへ渡り、瞑想やヨガを学びました。インド人グルのバグワン・シュリ・ラジニーシに師事し、「スワミ・アナンド・シャンタン」という名を与えられました。帰国後の1979年には、東京都西荻窪に「アナンドニケタン瞑想センター」を設立し、瞑想の普及に努めました。また、ラジニーシの絵画をシルクスクリーン版画にするプロジェクト「第1集シグニチャーシリーズ」（全21作品）をプロデュースしました。1991年以降は、再びインド、ネパール、タイなどを訪れ、精神世界を探求しました。2008年に帰国しています。

宮井陸郎は、映像作家、アーティスト、プロデューサー、そして瞑想家として、多岐にわたる分野で活躍しました。彼の作品と活動は、日本のアンダーグラウンド文化や映像表現に大きな足跡を残しました。

著書・作品

『映像と音でバックするキネディックなエレクトロニクス・エンヴァイラメント』1967年
『横尾ちゃん、だーいすき』1969年
（中西研二との共著）『なんにも、ない。』ヒカルランド、2019年12月

参考文献

宮井一郎『漱石の世界』講談社、1967年10月
宮井陸郎「新宿・しんじく・シンジク」『新宿プレイマップ』第8号、1970年2月、pp.24 - 25
深作光貞『新宿考現学』角川書店、1968年9月
宮井陸郎他「『芸術』」の予言!! 60年代ラディカル・カルチュアの軌跡」『「季刊フィルム」コレクション』フィルムアート社、2009年5月
阿部敏郎『随(かんながら) 神―意識の扉を開く鍵―』ナチュラルスピリット、2010年5月
『映像をめぐる冒険vol.5 記録は可能か。』東京都写真美術館、2012年12月
本間健彦『60年代新宿アナザー・ストーリー タウン誌「新宿プレイマップ」極私的フィールド・ノート』社会評論社、2013年6月

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