宮内泰介

宮内泰介

宮内泰介（みやうち たいすけ）氏は、1961年生まれの日本の社会学者です。現在は北海道大学の教授として教鞭を執り、主に環境社会学、地域社会学、そして開発社会学といった分野を専門に研究活動を展開しています。

経歴

愛媛県に生まれた宮内氏は、学術的な道を東京で歩み始めます。1984年に東京大学文学部を卒業した後、同大学大学院社会学研究科に進み、1991年には博士課程の単位を取得して退学しました。その後、研究者としてのキャリアをスタートさせ、1994年には福井県立大学経済学部に講師として着任し、後に助教授を務めました。1997年には北海道大学文学部に助教授として移籍し、教育・研究の場を北海道に移します。そして2008年には北海道大学文学研究科の教授に昇任しました。学業においては、2009年に東京大学より博士（社会学）の学位を取得しています。この際の博士論文は、「自然・移住・紛争の開発社会学：ソロモン諸島マライタ島民たちに見る生活の組み立て方」というテーマで、彼の研究関心の一端を示すものです。

研究活動

宮内氏の研究は非常に多角的です。彼の専門分野である環境社会学や地域社会学を基盤としつつ、特定の地域や資源に焦点を当てた実証的な研究を数多く行っています。例えば、北海道においては、自然環境と地域住民の関わり合いに注目し、より良い地域社会を築くための取り組みとしての「まちづくり」を社会学的な視点から分析しています。また、地理的な関心はアジアやオセアニアにも及びます。ソロモン諸島においては、開発がもたらす人々の生活や環境への影響、それに伴う移住や社会的な紛争といった複雑な問題構造を深く掘り下げています。さらに、カツオやエビといった特定の海洋生物と人間社会の関係、特にアジアにおける漁業や食文化、流通といった側面からも、環境と人間の相互作用を考察しています。これらの研究を通じて、宮内氏は、自然環境と人間の社会・文化・経済活動がいかに複雑に絡み合い、相互に影響し合っているかを明らかにしようとしています。単に環境問題を論じるのではなく、人々の生活の営みや、地域固有の歴史、文化、そして開発がもたらす現実的な変化といった要素を織り交ぜながら、社会学的なアプローチで環境問題に迫ることが彼の研究の大きな特徴と言えます。アカデミックな研究活動に加え、市民向けの学びの場である「さっぽろ自由学校『遊』」の共同代表を務めるなど、地域社会との関わりも大切にしています。

主な著作

彼の研究成果は多くの著書や共著として発表されています。代表的な単著としては、『エビと食卓の現代史』、『自分で調べる技術 ― 市民のための調査入門』、『開発と生活戦略の民族誌 ― ソロモン諸島アノケロ村の自然・移住・紛争』、『なぜ環境保全はうまくいかないのか ― 現場から考える「順応的ガバナンス」の可能性』、『グループディスカッションで学ぶ 社会学トレーニング』などがあります。これらの著作は、彼の多様な研究テーマ、例えばグローバルな食の問題、市民による社会調査の方法論、オセアニアでの開発問題、環境ガバナンスのあり方、そして社会学の学習法といった広範な関心を示しています。また、共同での研究も活発に行っており、『ヤシの実のアジア学』、『コモンズの社会学 - 森・川・海の資源共同管理を考える』、『環境社会学 新訂』、『カツオとかつお節の同時代史 ― ヒトは南へ、モノは北へ』、『コモンズをささえるしくみ ― レジティマシーの環境社会学』、『半栽培の環境社会学 ― これからの人と自然』、『かつお節と日本人』といった共著や編著があります。これらの共同研究は、環境問題や資源管理といったテーマを、複数の視点から掘り下げる試みであり、共同体における資源の利用や管理のあり方、「コモンズ」という概念を社会学的に考察する重要な貢献をしています。

宮内泰介氏の研究は、現代社会が直面する環境問題や地域課題に対し、人間の営みや文化、歴史といった人文・社会科学的な側面から光を当て、問題の本質を理解し、より良い社会を構築するための示唆を与えています。彼の研究成果は、学術界のみならず、市民社会における環境や地域への関心を深める上でも大きな役割を果たしています。

もう一度検索