宮崎友禅

宮崎友禅：江戸時代の扇絵師とその時代

宮崎友禅（みやざきゆうぜん、承応3年（1654年）- 元文元年6月17日（1736年7月25日））は、江戸時代中期、元禄期を中心に京都で活躍した、謎に包まれた扇絵師です。彼の描いた扇絵や着物の雛形は「友禅模様」と呼ばれ、大きな人気を博しました。この名は、後に着物の模様や染織技法そのものを指す言葉へと広がり、現在でも広く使われています。

経歴：知られざる生涯

友禅の出自は定かではありません。能登国（現在の石川県）穴水生まれとする説と、京都生まれとする説があり、本名も諸説あります。若い頃には加賀染めを学び、その後、京都に移り住み、知恩院前に住まいを構えました。「友禅」という号を名乗り、主に意匠の図案を描いて生計を立てていました。

扇絵師としての活動が中心でしたが、友禅染の完成にも貢献したとされます。弟子とされる日置友尽斎との協働によって、友禅染は完成の域に達したのです。扇面に描いた絵は「友禅扇」として流行し、その人気は着物（小袖）の雛形を描く仕事にも繋がりました。男女、身分を問わず愛された友禅模様は、やがて日本の染織文化に大きな影響を与えることとなります。

当時の記録によると、友禅は浮世絵師と見なされた時期もあったようです。井原西鶴の『好色一代男』にもその名が登場し、菱川派の江戸浮世絵と比較される記述があります。また、著作『余情雛形』などから、出版界とも関わりを持っていた可能性も示唆されています。染色図法による掛軸などの作品も多数残されており、多様な活動を行っていたことがわかります。晩年は金沢に帰郷し、そこで没したと伝えられています。

友禅と「友禅染」：名と技の伝播

友禅という名は、彼の死後も、その技法や模様を指す言葉として受け継がれて行きました。友禅自身とその周辺には、友尽斎をはじめ、友仙、友泉、勇善、由禅、遊仙、幽禅など、様々な名称が存在します。これらは弟子や、彼の名声に便乗した者たちのものだった可能性があります。いずれにせよ、友禅の人気の高さを物語るものといえるでしょう。

現在では、友禅は染色のデザイナーであり、友禅というブランドの創始者として位置づけられることが多いです。しかし、現存する資料からは、友禅斎が友禅染の技法の創作、大成、改良のいずれにも直接関与したとは断定できないという見解もあります。

友禅染が広く受け入れられた背景には、当時の奢侈禁止令がありました。豪華な織物や金箔の使用が制限されたことで、町人たちはより手の届く美しい衣服を求めるようになり、友禅染はその需要に応えるものとして歓迎されたのです。

作品とその後世への影響

友禅の作品には、『鴫の羽掻』（元禄4年）、『余情雛形』（元禄5年）、『和歌物あらかひ』（元禄5年）、『梶の葉』（宝永4年）などがあります。「富士に群鶏」といった作品も知られていますが、詳細は不明な点が多いです。

彼の名と技法は、現代まで受け継がれ、日本の伝統的な染織文化に大きな足跡を残しました。その謎多き生涯と、時代を超えて愛される「友禅」という名と技法は、今もなお人々の心を惹きつけています。

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