宮崎工作

宮崎工作（みやざきこうさく）

宮崎工作とは、1937年7月に発動された、日中関係を改善し、事変の拡大を防ぐための和平の試みを指します。この工作は、盧溝橋事件の発生後、急速に悪化した日中関係を背景にしていますが、最終的には未遂に終わりました。主に宮崎滔天の息子宮崎龍介を通して行われたこの和平活動は、中国の革命支援者としての家系に由来し、その名が付けられました。

事件の背景

1937年7月7日、盧溝橋で日本軍と中国軍の衝突が発生しました。この事件は後に盧溝橋事件と呼ばれ、日中戦争の引き金となります。事件発生直後、中国共産党は国民に対日全面抗戦を呼びかけ、日本側は現地軍に対し、日本の部隊による無用な行動を避けるよう命令を出しました。しかし、翌日には日本の陸軍参謀本部が国内事情への介入を決定し、事態はさらに悪化しました。

日本側は過去の事件解決に用いられた「現地解決方式」を適用しようと試みましたが、事変はますます広がる可能性を示していました。特に、日本では関東軍が事態の拡大を望み、一方、中国では共産党が積極的に抗戦を推進していたことが背景にあります。

宮崎龍介と秋山定輔

宮崎龍介は、1937年7月19日に秋山定輔から電話で呼び出されました。秋山は当時の政界の重要人物であり、宮崎に中国国民党の蔣介石と戦争の停止に向けて協議するよう指示を出しました。その際、探索の責任を近衛文麿首相が負うことを明言しました。最初の指示は「すぐに南京に行って蔣介石を連れて来い」というものでしたが、宮崎はその無理さを理解し、次に汪兆銘を日本に連れてくることを提案されました。

宮崎はその後、中華民国の大使館を通じて蔣介石との接触を試み、蔣介石から「南京に来れば会う」との返答を得ます。これを受け、彼は神戸から上海へ向かう船を手配しました。

露見と拘束

しかし、宮崎の動きはすぐに露見してしまいました。7月23日、新橋駅から出発し、途中京都での電報によって警戒を促されました。その後の7月24日、船の上で憲兵隊員に拘束されました。持ち物がチェックされ、事前に交わされた情報彼は、密命での渡航を振り返ったものの、電報が傍受され、憲兵によって拘束されたことが分かります。

宮崎はその後、司法省に引き渡される計画が動いていたことを知りませんでした。拘束後、彼の自宅は家宅捜索を受け、妻と子供たちは長野県に逃げることとなります。宮崎は、憲兵本部に送還された後、近衛の依頼での行動が誤解であったとの供述書に署名をさせられ、釈放されました。

結果と評価

この平和的働きかけは結局未遂に終わりましたが、日中戦争中の和平工作の一つの起点となったことは重要です。政府が密使を通じて試みたものですが、軍部の干渉や、派遣された人物たちの信頼が薄い点が今後の和平工作に影響を与えました。成果を挙げることはできなかったものの、宮崎工作がその後の試みへの教訓として受け取られるべきです。

この事件からの教訓を踏まえ、同様の働きかけは時折行われましたが、日中間には依然として信頼が築かれることはなく、戦争の進行としての現実を受け止めなければなりませんでした。

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