宮崎梧一

宮崎梧一（みやざき ごいち）は、1914年5月5日に生まれ、2003年3月5日に亡くなった日本の弁護士であり、最高裁判所の判事を務めた人物です。千葉県出身。

生い立ちと裁判官時代

旧制富山高校を経て、1940年に東京帝国大学法学部を卒業。司法官試補、裁判官として、札幌地方裁判所や大阪地方裁判所などに勤務しました。1944年には陸軍に召集され中国へ出征。見習士官として終戦を迎え、法務中尉となりました。終戦後、シベリアに抑留され、モスクワ郊外で労働を強いられるという過酷な経験をしました。

弁護士への転身

復員後、「裁判官では生活できない」という理由から、1948年に弁護士登録。弁護士としては、特に目立つ事件を手がけることはありませんでしたが、離婚、遺産、借金などの市民間のトラブルや刑事事件の国選弁護人などを担当し、市民生活に寄り添った活動をしました。

最高裁判所判事への就任

1980年2月5日、弁護士会での役職経験や著名な事件の担当経験がなかったにもかかわらず、最高裁判所判事に任命されました。日本弁護士連合会が宮崎氏を推薦した際、法務省や最高裁では「名前も聞いたことがない」と言われるほど、異例の人事でした。就任時には、「初心に戻って大いに勉強したい。常に社会の動向を注視し、時代に遅れないようにしたい」と抱負を述べ、また、「無名の経歴が、今後の裁判で自身の経験を活かすことになるだろう」と語りました。

宮本身分帳事件と退官

宮本身分帳事件では、1982年1月28日の最高裁判決において、職権濫用罪の成立を認めた多数意見に対し、宮崎氏は職権濫用罪は成立しないとする反対意見を表明しました。1984年5月に定年退官。退官後は再び弁護士として活動しました。

宮崎梧一は、裁判官、弁護士、そして最高裁判所判事という多様な経験を通じて、市民の視点に立った司法のあり方を追求した人物と言えるでしょう。その経歴は、司法の世界における多様性の重要性を示唆しています。

参考文献

野村二郎『最高裁全裁判官：人と判決』三省堂、1986年。ISBN 9784385320403
野村二郎『日本の裁判史を読む事典』自由国民社、2004年。ISBN 9784426221126

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