宮川用水

宮川用水

宮川用水は、三重県南勢地区に位置する、宮川を水源とする農業用水路網の総称です。この用水路は、地域の農業を支える重要な役割を果たしています。宮川総合開発事業の一環として建設され、多気郡大台町から伊勢市に至る広大な農地に水を供給しています。

概要

宮川用水は、宮川総合開発事業における農業用水事業として建設されました。多気郡大台町の宮川流域から取水し、多気郡大台町、多気町、明和町、度会郡玉城町、伊勢市の農地に配水されています。

この用水路の完成により、宮川下流域における水不足が解消され、受益地域では圃場整備が進み、県内有数の先進農業地域へと発展しました。2003年3月時点で、4,681ヘクタール（水田4,066ヘクタール、普通畑530ヘクタール、樹園地85ヘクタール）の農地が恩恵を受けています。

主な施設

宮川用水は、国営線、県営線、団体営線の3つの系統で構成されています。

国営線

農林省（現・農林水産省）が建設した水路と施設です。

粟生頭首工（あおとうしゅこう）: 多気郡大台町粟生に位置する、取水のための可動堰です。
導水路: 粟生頭首工から笠木分水工（多気郡多気町笠木）までを結ぶ用水路です。
第1号幹線水路: 笠木分水工から斎宮調整池（多気郡明和町池村）を経由し、伊勢市小木町まで続く用水路です。
第2号幹線水路: 笠木分水工から度会郡玉城町宮古までを結ぶ用水路です。

県営線

三重県が建設した水路と施設で、国営線から各地へ水を配水します。

団体営線

宮川用水土地改良区が建設した水路と施設で、国営線や県営線から各地へ水を供給します。

沿革

宮川用水は、以下のような歴史を辿ってきました。

1951年（昭和26年）: 宮川総合開発事業に農業用水が組み込まれました。
1957年（昭和32年）: 宮川用水土地改良区が設立されました。
1958年（昭和33年）: 国営導水路が起工され、宮川用水事業の起工式が行われました。
1961年（昭和36年）: 県営用水路が起工されました。
1962年（昭和37年）: 粟生頭首工、国営幹線水路、団体営用水路が起工されました。
1964年（昭和39年）: 粟生頭首工と国営導水路が完成しました。
1966年（昭和41年）: 国営幹線水路が完成し、国営事業の完工式が行われました。
1976年（昭和51年）: 県営用水路が完成しました。
1982年（昭和57年）: 団体営用水路が完成し、宮川用水事業の総合竣工式が行われました。
1995年（平成7年）: 国営宮川用水第二期土地改良事業の起工式が行われました。

宮川用水に対する反対運動

1957年から1965年にかけて、受益予定地域の各地で宮川用水に対する反対運動が起こりました。主な反対理由は、「現状の農業用水で十分であり、新たな負担金を支払う必要がない」、「地元負担が大きすぎる」といったものでした。農林省や宮川用水土地改良区との交渉の結果、補償協定が締結され、多くの地域で問題が解決しました。

河川水位低下に対する補償

伊勢市円座町は宮川用水の受益地域外でしたが、宮川本流からの揚水によって灌漑を行っていました。しかし、宮川ダムの建設により水位が低下し、揚水が困難になったため、粟生頭首工建設による水位低下を懸念しました。1958年に農林省に対策を求めた結果、渇水期における水位低下は避けられないと判断され、新たな揚水施設が補償工事として建設されました（1963年完成）。

漁業補償

1957年頃、宮川河川沿岸の漁業組合から、宮川用水事業による漁獲量の減少に対する補償要求が農林省に提出されました。その後、農林省と漁協との間で交渉が続き、1962年に補償金額の協定と取水制限に関する覚書が交わされ、問題が解決しました。宮川河口の漁業組合に対しても、養殖海苔の減収に対する補償が行われました。

国営宮川用水第二期土地改良事業

用水路などの施設の老朽化や用水不足に対応するため、1995年から水路施設の改修が行われています。主な内容は、導水路と幹線水路の改修、斎宮調整池の造成などであり、2010年に完了予定です。

参考資料

『宮川用水史』（1986年3月25日発行、編集発行：宮川用水土地改良区）
『水土里の森 宮川用水の概要』（2008年発行、宮川用水土地改良区）

関連項目

宮川
宮川ダム
三瀬谷ダム
東海農政局
三重農政事務所

外部リンク

宮川用水土地改良区
* 東海農政局/宮川用水第二期農業水利事業所

もう一度検索