宮田又鉱山

宮田又鉱山の歴史：地域と歩んだ中小銅山の興亡

秋田県大仙市協和地区（旧仙北郡協和村）に位置する宮田又鉱山は、中小規模ながらも、その歴史は地域社会との関わり、そして幾多の困難を乗り越えた挑戦の物語として注目に値します。鍋倉山(530m)西側の宮田又沢上流域に広がり、奥羽線羽後境駅から約12kmの専用森林鉄道で結ばれていました。

開山から明治時代

宮田又鉱山の歴史は1722年（享保7年）に始まります。近隣の畑鉱山の落盤事故で職を失った鉱夫を救済するため、地元の鉱山管理者であった多治兵ェ門によって発見されたと伝えられています。1737年（元文2年）、宮田銅山として操業を開始。その後、享和年間以降は久保田藩の直轄鉱山「鍋倉鉱山」となりますが、採掘成果は芳しくなく、長い休眠期間に入ります。

明治維新後の1868年、境村（現大仙市協和境）の唐松神社神主、物部長之鵜飼によって再開発が試みられましたが、鵜飼の死去により頓挫。1888年（明治21年）には石川県金沢市の横山鉱業部に経営権が移譲されます。しかし、坑内浸水問題や銅価格の変動に苦しみ、1934年（昭和9年）に横山鉱業部は鉱山を放棄しました。

昭和期の隆盛と閉山

その後、宮田又鉱山株式会社が経営を引き継ぎますが、採掘の難しさから経営は悪化します。しかし、日中戦争下の軍需増産という追い風を受け、帝国鉱山開発株式会社が1939年（昭和14年）に買収。最新設備の導入と、近隣の荒川鉱山の閉山による労働力流入により、宮田又鉱山はかつてないほどの繁栄を謳歌する時代を迎えます。

戦後、GHQによる財閥解体により、帝国鉱山開発株式会社は解体され、新鉱山開発株式会社が事業を継承。日本の復興と経済成長に貢献しながら鉱山の規模を拡大していきます。しかし、1965年（昭和40年）、新たな鉱脈発見の見込みが立たなくなり、ついに閉山を迎えました。

地域との共存と技術的課題

宮田又鉱山は、他地域の大規模鉱山と比べ、中小規模であったため、地域社会との良好な関係を維持しながら開発を進めた点が特徴です。しかし、断層が多く、湧水も多いため、採掘作業は常に困難を伴っていました。坑内浸水は長年の課題であり、経営に大きな影響を与えたと考えられます。

宮田又鉱山の歴史的意義

宮田又鉱山は、その歴史を通して、地域社会との共存、そして技術的困難との闘いを象徴する存在でした。その興亡は、日本の近代化と産業発展、そして資源開発の難しさを改めて考えさせる貴重な事例となっています。文献としては、『秋田県鉱山誌』（新旧）、進藤孝一の『宮田又鉱山誌』、斎藤實則『あきた鉱山盛衰記』などが詳しい情報源となっています。これらの文献を紐解くことで、宮田又鉱山の歴史をより深く理解することができるでしょう。

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