宮竹駅

宮竹駅

宮竹駅（みやたけえき）は、かつて石川県能美郡辰口町宮竹、現在の能美市宮竹町に存在していた、北陸鉄道能美線の一駅でした。その歴史は大正時代に始まり、地域の産業を支える役割を担いましたが、昭和後期の路線廃止に伴い姿を消しました。

歴史

この駅の始まりは、1925年（大正14年）6月5日に遡ります。当時の能美電気鉄道によって開設されたのが最初です。開業後、利用者の増加や路線の発展に伴い、1931年（昭和6年）12月18日には、列車が行き違うための設備が新設されました。これにより、運転効率の向上が図られたと考えられます。

その後、能美電気鉄道は会社の吸収合併や事業譲渡を経験します。まず、1939年（昭和14年）8月1日には金沢電気軌道に統合されました。続いて、1941年（昭和16年）8月1日には北陸合同電気（現在の北陸電力の前身の一つ）が金沢電気軌道を合併。さらにその翌年、1942年（昭和17年）3月26日には、北陸合同電気から鉄軌道事業が譲渡され、現在の北陸鉄道が発足。宮竹駅も北陸鉄道の一員となりました。

長らく地域の駅として機能していましたが、時代が変化するにつれてその役割も変わっていきます。1968年（昭和43年）9月1日から9月6日にかけて、駅の機能が大幅に縮小されました。具体的には、列車の進行方向を管理する閉塞業務の取り扱いが廃止され、列車交換設備も撤去されました。また、貨物列車が利用する側線も廃止され、駅の構造は単式ホーム1面1線というシンプルな形になりました。この機能縮小と同時に、駅員が無配置となる無人駅化も実施されました。

そして、1980年（昭和55年）9月14日、利用者の減少などにより北陸鉄道能美線が全線廃止となったことに伴い、宮竹駅もその歴史に幕を閉じ、廃駅となりました。

駅構造

宮竹駅の構造は、その歴史の中で変化しています。最も機能が充実していた時期には、前述のように列車の交換が可能な設備を持ち、運転上の重要な地点でした。閉塞業務も行われており、駅員が配置されている有人駅でした。特に特筆すべきは、貨物を取り扱うための側線が設けられていたことです。この貨物側線では、地域で生産される米や肥料、あるいは地場産業である織物といった物資の積み降ろしが活発に行われていました。これらの物資輸送を通じて、駅は地域経済を支える一端を担っていたのです。

また、駅舎の近くには、線路や関連施設の保守・管理を行う専属の保線員が常駐するための建物も存在していました。これは、かつて鉄道の維持管理において、人的な対応が重要であった時代の名残であり、宮竹駅が単なる乗降場所以上の役割を果たしていたことを示しています。

しかし、機能縮小後の晩年には、駅構造は大きく変わりました。列車交換設備や貨物側線は撤去され、ホームは列車が片側一面にのみ停車する単式ホーム1面1線のみとなりました。かつての賑わいは失われ、駅舎はホームの上に立つ木造の建物として、静かに旅客の利用を見守る存在となっていました。

駅周辺

駅が営業していた当時、その周辺には地域の生活や教育、研究に関わる様々な施設が存在していました。駅のすぐ近くには宮竹郵便局があり、また地域の子どもたちが通う宮竹保育園や能美市立宮竹小学校もありました。少し足を延ばせば、学術研究機関である北陸先端科学技術大学院大学や、関連施設である東京プロセスサービス、石川ハイテク交流センターといった近代的な施設も見られます。古くからの寺院である正林寺や、地域に根差した酒造店である宮本酒造店も周辺に位置しており、新旧様々な施設が混在するエリアでした。

現状

北陸鉄道能美線が廃止されて以降、宮竹駅の跡地はそのまま放置されるのではなく、地域住民のための空間として再整備されました。現在、駅が存在した場所は公園として利用されており、かつて列車が行き交い、人々が乗り降りしていた場所は、子どもたちの遊び場や地域住民の憩いの場として生まれ変わっています。廃線となり鉄道の姿は消えましたが、駅があった記憶は、この公園の中に形を変えて受け継がれています。

隣接していた駅は、灯台笹駅と三ツ口駅でした。これらも能美線の廃止と共に姿を消しています。

もう一度検索