家出娘

家出娘

作品概要

2022年3月22日にNHK総合の特集ドラマとして放送された単発テレビドラマ。脚本家を目指す新人の登竜門として知られる「創作テレビドラマ大賞」の第45回において、応募総数1,047本の中から見事大賞に選ばれた脚本を基に制作されました。

物語の中心に据えられているのは、大切な家族を失った者同士の心の交流と、そこからの再生への道のりです。母を亡くし喪失感を抱える一人の少女が衝動的な行動に出て、同じく姉を亡くした叔母のもとへ身を寄せたことから始まる数日間の共同生活を通して、二人が互いの痛みや孤独に静かに寄り添い、新たな一歩を踏み出す勇気を見出していく姿が繊細に描かれます。

あらすじ

小学5年生の江井はるかは、地方の街で父・清治と二人で暮らしています。3年前に最愛の母、沙希子を亡くして以来、父との静かな日々を送っていましたが、ある日、父に再婚話が持ち上がったことに強い反発を感じます。新しい「お母さん」を受け入れられない思いや、母への複雑な感情が混ざり合い、やり場のない気持ちを抱えたはるかは、衝動的に家出を決行。目指すは、遠く離れた東京に住む叔母、湯浅和歌子の家でした。

突然、姪であるはるかの訪問を受けた和歌子は、予期せぬ事態に戸惑いを隠せません。しかし、姉であるはるかの母、沙希子を亡くした悲しみを自身も抱えている和歌子は、大切な人を失ったはるかの心に寄り添おうとします。こうして、図らずも始まった叔母と姪の数日間の共同生活。不器用ながらも互いの存在を感じ合い、それぞれの心の内にある悲しみや寂しさ、そして亡き家族への思いを共有する中で、二人の間には静かな絆が生まれていきます。

一方、家出された父・清治ははるかの安否を心から心配し、その行方を案じます。東京へ向かったはるかの道中では、立ち寄った交番の警官や、和歌子の住むマンションの住人、青果店の店主など、様々な人々との小さな出会いがあり、それぞれがはるかに手を差し伸べたり、僅かながらも関わりを持ったりします。

物語は、叔母・和歌子との共同生活を通して、はるかが自身の心の揺れ動きと向き合い、喪失を乗り越えていく過程を丁寧に追います。和歌子もまた、はるかの存在を通して、姉を亡くした自身の悲しみと向き合い、前を向く力を得ていきます。それぞれが抱える孤独や悲しみを分かち合い、互いに支え合うことで、二人は新たな未来へと歩み出す希望を見出していくのです。このドラマは、家族の喪失という重いテーマを扱いながらも、残された者たちが互いに寄り添い、再生へと向かう姿を温かく描いています。

主な登場人物とキャスト

江井はるか（演：木村湖音）：物語の主人公。小学5年生。3年前に母を亡くし、父と二人暮らし。父の再婚話に反発し、東京の叔母のもとへ家出する。
湯浅和歌子（演：ファーストサマーウイカ）：はるかの叔母であり、亡き母・沙希子の妹。突然現れた姪に戸惑いつつも、優しく寄り添い受け入れる。
江井清治（演：有野晋哉）：はるかの父。家出した娘のことを心底心配している。
湯浅義雄（演：徳井優）：はるかの祖父で、沙希子と和歌子の父。ユニークな一面を持ち、娘（和歌子）が出演する劇中劇（ゾンビ映画）を喜んで鑑賞する。
江井沙希子（演：高見こころ）：はるかの母で、和歌子の姉。物語開始時点では既に故人。
湯浅真由美（演：梶本惠美）：はるかの祖母で、沙希子と和歌子の母。

その他、はるかの家出の過程で関わる人々として、交番の警官（演：松尾淳一郎）、マンションの住人（演：F.ジャパン）、青果店の店主（演：嘉門洋子）らが登場し、物語に彩りを加えます。また、和歌子が出演する劇中劇には、ヒロインの女子高生役（演：吉田美佳子）が登場します。

スタッフ

作：船越凡平
音楽：haruka nakamura
演出：石塚嘉（NHKエンタープライズ）
プロデューサー：宇佐川隆史（NHKエンタープライズ）
制作統括：高橋練（NHKエンタープライズ）、岡本幸江（NHK）
制作：NHKエンタープライズ

本作は、喪失という困難な経験を抱えた者たちが、互いの存在を通して慰めを見出し、共に未来へ歩み出す希望を描いた作品として、多くの視聴者に感動を与えました。制作にあたっては、あしなが育英会の取材協力も得ており、テーマのリアリティにも配慮されています。

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