家弓家正

家弓家正（かゆみ いえまさ）

家弓家正（1933年10月31日 - 2014年9月30日）は、日本の著名な声優・俳優です。東京府東京市（現在の東京都港区）に生まれ、戦争による疎開を経て鹿児島県に転校しました。高校では新設された演劇部に参加し、演劇への興味を深めました。1955年には舞台芸術学院を卒業し、声優となる道を歩み始めました。

彼は1956年に劇団七曜会に入団し、その同年にNHKのラジオドラマで声優デビューを果たしました。1957年にはアメリカのテレビ番組『ミッキー・ルーニー・ショー』の吹き替えデビューを果たしました。その後、1963年に放送された海外ドラマ『アイランダーズ』では、ザック・マロイ役に起用され、注目を浴びるようになりました。

彼は多数の事務所で活動し、最終的には81プロデュースに所属していました。2014年9月30日、家弓は病気のために東京都内の病院で逝去し、80歳でその生涯を閉じました。

声の特色

家弓家正の声の特徴は、バスバリトンという声種に分類されるもので、「腹の底から響く重々しい声」と称賛されていました。特に博士役や知的な悪役領域での演技が得意で、暖かさを感じさせる中にも渋みを持ったソフトな声質が魅力となっていました。

彼はテレビドラマ、アニメ、吹き替え、ナレーションと幅広いジャンルで活躍し、特に吹き替えの分野では、フランク・シナトラやドナルド・サザーランドなど国際的に知られる俳優を数多く担当しました。このような役柄を演じる中で、彼の渋さと並行して見え隠れする優しさが評価されたのです。

劇的エピソード

家弓は芸名を使用せず、姓名判断で「良くない名前だ」と言われた過去があったにもかかわらず、本名で活動を続けました。また、同僚の若本規夫から「精密機械」と称されるほど、台詞をミスすることが少なく、安心して共演できる存在であったというエピソードが残っています。彼はかつて、自身の活動について「非人間的だね」と笑い飛ばし、繁忙な時代のなかで安心して仕事を続けるための努力を重ねてきたことを明かしました。

彼は多くの悪役を演じたことがあり、例えば『風の谷のナウシカ』のクロトワ役や『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』のパラガス役では、いずれも強い印象を残しています。家弓自身はこれらのキャラクターに対して、ストレス発散や普段できないことを思い切り表現する楽しみがあったと語っています。悪役の役割を演じることで自分を解放し、新たな創造を追求していました。

フランク・シナトラと家弓

フランク・シナトラの吹き替えは家弓家正の代表的な仕事のひとつで、1967年からテレビ朝日で放送された映画で彼の声が使用されました。家弓はシナトラを演じる際、長い間にわたる緊張を感じていたと言います。当初は世界的に有名な歌手であるシナトラを難しいと感じていましたが、次第にその役割を自分のものとして受け入れるようになり、作業を進めていきました。シナトラの演技については歌手としては好ましいものの、役者としては大きく魅力を感じなかったと冗談を交えて語る一面もありました。

家弓家正はその活動を通じて、日本の声優界に多大な影響を与えた方でした。彼が演じた数々のキャラクターと彼自身のキャリアは、後輩の声優たちにとっても鼓舞となっているのは間違いありません。

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