家形石棺

家形石棺について

家形石棺（いえがたせっかん）は、古墳時代に特有の形状を持った石棺です。この石棺の特徴は、屋根のように形作られた蓋石と、箱状の身を持っていることにあります。身の部分は刳抜式または組合式と呼ばれる技法が用いられ、様々な地域で使用されていました。特に古墳時代中期後半から終末期にかけて広く利用され、その形状や装飾は時代ごとに変化しています。

特徴

家形石棺の自体の蓋石には、四方に傾斜があり、それに伴って縄掛突起という長方形の突起が設けられています。これにより、石棺の形状は屋根を模したものとなります。古墳時代が進むにつれ、身の部分には格狭間を設けたり、縄掛突起には蓮華文などの彫刻が施されることもありました。特に、横口式の石棺は、入口を側面に設けているため、独特のデザインを持っています。

この家形石棺は、特に畿内地域で多く見られ、使用される石材としては竜山石（兵庫県高砂市産）、二上山白石（同じく二上山麓産）、阿蘇ピンク石（熊本県宇土半島産）など、地域によって異なる素材が用いられました。

主要な出土古墳

家形石棺は、日本全国で発見されていますが、特に以下の古墳が有名です。

東北地方

• - 一塚古墳（宮城県仙台市）

関東地方

• - 総社愛宕山古墳（群馬県前橋市）
• - 宝塔山古墳（群馬県前橋市）

中部地方

• - 賤機山古墳（静岡県静岡市）
• - 大牧1号古墳（岐阜県各務原市）
• - 羽崎中洞古墳（岐阜県可児市）
• - 不孝寺塚古墳（岐阜県可児市）
• - 岩屋古墳（愛知県小牧市）
• - 散田金谷古墳（石川県羽咋郡宝達志水町）

近畿地方

• - 鴨稲荷山古墳（滋賀県高島市）
• - 藤ノ木古墳（奈良県生駒郡斑鳩町）
• - 見瀬丸山古墳（奈良県橿原市）
• - 植山古墳（奈良県橿原市）
• - 小谷古墳（奈良県橿原市）
• - 菖蒲池古墳（奈良県橿原市）
• - 牧野古墳（奈良県北葛城郡広陵町）
• - 櫟山古墳（奈良県北葛城郡當麻町）
• - 茅原狐塚古墳（奈良県桜井市）
• - 赤坂天王山古墳（奈良県桜井市）
• - ホケノ山古墳（奈良県桜井市）
• - 都塚古墳（奈良県高市郡明日香村）
• - 條ウル神古墳（奈良県御所市）
• - 水泥南古墳（奈良県御所市）
• - ハミ塚古墳（奈良県天理市）
• - 割塚古墳（奈良県大和郡山市）
• - 小口山古墳（大阪府羽曳野市）
• - 唐櫃山古墳（大阪府藤井寺市）
• - 長持山古墳（大阪府藤井寺市）
• - 一須賀古墳群（大阪府南河内郡河南町）
• - 玉手山古墳群東ワカ山古墳（大阪府柏原市）
• - 耳原古墳（大阪府茨木市）
• - 大谷古墳（和歌山県和歌山市）
• - 白鳥塚古墳（兵庫県宝塚市）

中国地方

• - 江崎古墳（岡山県総社市）
• - こうもり塚古墳（岡山県総社市）
• - 牟佐大塚古墳（岡山県岡山市）
• - 築山古墳（岡山県瀬戸内市）
• - 岡田山古墳（島根県松江市）
• - 新井の石舟古墳（鳥取県鳥取市）

九州地方

• - 石人山古墳（福岡県八女郡広川町）
• - 下山古墳（大分県臼杵市）
• - 江田船山古墳（熊本県和水町）

結論

家形石棺は古墳時代の重要な文化財の一つであり、そのデザインや材質は地域ごとに多様性がありました。出土された古墳の中には、美しい彫刻や独特な形状を持つものも多く、当時の人々の信仰や価値観を反映しています。この貴重な文化遺物は、考古学的な研究だけでなく、日本の歴史を理解する上でも重要な役割を果たしています。

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