家族 (映画)

映画『家族』の概要とストーリー

『家族』（かぞく）は1970年に松竹によって制作・公開された、山田洋次監督の代表作の一つです。この作品は、倍賞千恵子演じる「民子」を中心に描かれる民子3部作の第一作であり、後の『故郷』（1972年）および『遙かなる山の呼び声』（1980年）に繋がる重要な位置づけとなっています。

映画の背景と製作

本作は長崎県の小さな島を出発し、北海道の開拓村に向かう一家の旅路を描いたもので、撮影はオールロケーションで行われました。ドキュメンタリー風の表現を取り入れ、高度経済成長期の日本の現実を映し出します。公害問題が顕在化している北九州市や、大阪で行われた日本万国博覧会の様子、東京・上野公園などが登場し、当時の社会情勢も背景に絡めながら家族の姿を描いています。1970年に公開されたこの映画は、キネマ旬報ベストテンで1位に輝き、山田洋次監督の評価を高めることに寄与しました。

ストーリーの流れ

映画は、カトリック教徒の風見精一一家が故郷の長崎県伊王島から、酪農を夢見て北海道の中標津町に移住する過程を描いています。最初は民子の反対で精一が単独での移住を考えますが、最終的には彼女も意を決し家族全員での移住が決まります。

引き続き、精一の高齢の父源蔵は広島に住む次男夫婦の元に一時的に預けられることになりますが、次男夫婦の本心がわかり、結局源蔵も家族と共に北海道へ向かうことになります。4月初め、桜が咲く季節に一家は列車を乗り継ぎ、福山へ向かいますが、そこで次男夫婦の状況を知ることになります。

一家は大阪で日本万国博覧会を見物し、さらに東京へと向かいますが、旅の途中、赤ん坊の長女が具合を悪くし、宿泊先の旅館から急遽病院に駆け込むも、残念ながら命を落としてしまいます。悲しみを抱えながらも、家族は急いで北海道へ向かい、ようやく中標津に到着します。

新しいスタートと悲劇

到着後、地元の人々の温かい歓迎を受けた一家は一時的に安堵しますが、源蔵がその晩布団の中で静かに息を引き取ってしまいます。精一は、2人の家族を失い絶望の淵に立たされますが、民子は「やがてここにも春が来て、一面の花が咲く」と励まし、希望を忘れずに前に進もうとします。

中標津の大地には、新たに2つの十字架が立ち、家族の絆とともに新たな命が芽吹くことを暗示しています。6月には牛が生まれ、民子のお腹にも新しい命が宿るのです。これを通じて、映画『家族』は愛と喪失をテーマにした感動的な作品となっています。

作品の評価

『家族』は、数々の賞を受賞し、映画史における重要な作品として位置付けられています。毎日映画コンクールでは日本映画大賞など、主演賞を含む多くの受賞を果たしました。山田洋次監督とキャスト陣が生み出したリアルな情感は、視聴者に深い印象を与え、今日でも多くの人々に愛されています。

映画『家族』は、家族の絆や別れ、そして新たな出発に至るまでのドラマを感動的に描いた作品として、今なお多くの人に記憶されているのです。

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