家族日記

家族日記（かぞくにっき）

『家族日記』は、日本の現代演劇の一つです。本作の脚本を手掛けたのは、劇団道学先生や劇団ハートランドの座付き作者として知られる中島淳彦氏。演出は、プラチナペーパーズを主宰する堤泰之氏が担当しました。企画・制作はTALLY-HOが行い、2004年1月24日から1月30日まで、東京・下北沢にある劇場ザ・スズナリにて上演されました。

物語の舞台は、同じ屋根の下で暮らす五人の家族。

あらすじ

作品は、一軒の家に住む五人の家族の日常を描き出します。彼らはそれぞれが胸の内に様々な思いを抱えながらも、表面上は平穏を保ち、衝突を避けながら生活しています。それは、戦後の混乱期を経て、高度経済成長期を陰ながら支え、日本の発展に貢献してきた世代の家族が辿ってきた道筋をなぞるかのようです。そこには、時にくすっと笑えるような出来事があり、また時には思わず涙がこぼれるような瞬間もあります。

しかし、長年一家を支えてきた父親の定年退職を機に、これまで保たれてきた家族のバランスが少しずつ崩れ始めます。この変化は、登場人物たちに「家族が互いを支え合ってきた基盤は一体何だったのか？」という問いを突きつけます。

物語は、人間が自分自身の心に正直に、あるいはありのままに生きようとすることの難しさ、そこから生まれる滑稽さ、そして同時に胸を締め付けられるような切なさを交錯させながら展開していきます。この作品が描く家族の姿は、ちょうど人々が個々の価値観をより強く主張し始め、互いに譲り合うことや「我慢」を美徳としない風潮が広がりつつあった、昭和という時代が終わりを迎えようとしていた頃の日本の縮図とも言えるかもしれません。

可笑しさと切なさが織りなすこの家族の物語は、観る者に「人が人として生きる」ことの意味や、現代社会における家族のあり方について深く考えさせる機会を与えてくれます。

上演情報・キャスト・スタッフ

2004年1月に行われた初演は、脚本：中島淳彦、演出：堤泰之という布陣で実現しました。企画制作はTALLY-HO。

出演者には、佐藤輝（特別出演）、鈴木弥生、恒吉雄一、友松タケホ、長森雅人（無名塾）、箱木宏美、福山秀子、丸山裕子（テアトル・エコー）、水口てつ（ばんぶるびぃ）といった面々が名を連ねました。

スタッフは多岐にわたり、舞台美術を田中敏恵、音響を井出比呂之、照明を今野恵美子、舞台監督をアラセーヌが担当しました。また、作曲は豊島修一、広報撮影は中山冨士彦、公演チラシなどのイラストはひん次郎（箱木宏美）が手掛けました。印刷は（有）トライアド、制作はB-MY'Sが担いました。

公演実現にあたっては、北山ハウス産業、劇団ハートランド、人力舎、篠原公雄、毛利恵子、MAフィールドといった企業や個人からの協力がありました。

本作は、中島淳彦氏が座付き作者として活動する劇団道学先生や劇団ハートランド以外にも、多方面で精力的に作品を発表している時期に生まれたものであり、氏の筆致による普遍的な家族のテーマへの切り込みが光る一作と言えます。堤泰之氏による演出と、実力派キャスト、そして多くのスタッフ・協力者によって創り上げられた舞台は、観客に温かくも胸に響く感動をもたらしました。

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