家族難民

「家族難民」という言葉は、社会学者の山田昌弘氏が2014年の著書『「家族」難民』で初めて用いた概念です。これは、現代社会において増加傾向にある独身者の中でも、特に「家族を持ちたい」という強い願望を持ちながら、様々な事情によりそれが実現できない人々を指します。

家族難民と定義される人々は、必ずしも独身を望んでいるわけではありません。むしろ、結婚や家庭を持つことを強く望んでいるにも関わらず、経済的な困窮や社会的な障壁によって、その願いを叶えられずにいます。このような状況は、現代社会における貧困問題と深く結びついており、経済的な安定を得ることが難しい状況が、結婚へのハードルを高めていると考えられています。

この「家族難民」の増加は、深刻な社会問題へと発展する可能性を秘めています。特に懸念されるのが、孤独死の増加です。家族という社会的なつながりを持たない人々は、病気や事故などで倒れた際に発見が遅れやすく、孤独死のリスクが高まります。

現在、日本では年間約3万人が孤独死しているとされていますが、このまま家族難民が増加し続ければ、2040年には年間約20万人が孤独死を迎えるという推計もあります。これは、2040年には5人に1人が孤独死を迎える可能性があるという、非常に深刻な数字です。家族という社会的なつながりの希薄化は、個人の幸福だけでなく、社会全体の安定を脅かす要因ともなりかねません。

家族難民問題は、単に個人の問題として捉えるのではなく、社会構造全体の問題として捉え、その解決に向けて取り組む必要があるでしょう。経済的な支援策の充実、社会的なつながりを構築できるようなコミュニティの形成など、多角的なアプローチが求められます。

参考文献:

• - 山田昌弘『迷走する家族―戦後家族モデルの形成と解体』有斐閣　2005年
• - 山田昌弘『「家族」難民: 生涯未婚率25%社会の衝撃』朝日新聞出版 2014年
• - 山田昌弘『家族難民 中流と下流──二極化する日本人の老後』朝日文庫　2016年
• - 林美保子『ルポ 難民化する老人たち』イースト文庫　2016年

外部リンク:

• - 40代「家族難民」に格差 生活保護から「暇つぶし」まで 〈AERA〉-朝日新聞出版｜dot.（ドット）
• - 日本に増える「家族難民」 シェアハウスが救う？ 〈AERA〉-朝日新聞出版｜dot.（ドット）

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