家日和

『家日和』 - 奥田英朗の短編小説集

奥田英朗による短編小説集『家日和』は、家庭の複雑な人間関係や出来事を描いた作品集です。この本は「小説すばる」で2004年から2006年にかけて連載され、その後2007年4月に集英社から正式に刊行されました。また、著作は第20回柴田錬三郎賞を受賞しており、幅広い読者に支持されています。

表紙には本城直季の美しい写真が使われており、その視覚的な魅力もまた本作品の特徴です。さらに、本作は西村拓によって漫画化され、集英社の『オフィスユー』に掲載されています。『家日和』は「平成の家族小説シリーズ」の第1弾に位置づけられており、以降2011年には『我が家の問題』、2015年には『我が家のヒミツ』と続編が出版されています。

収録作品の紹介

『家日和』には、家庭内の様々なシチュエーションが描かれた短編が収められています。以下にその主要な作品を紹介します。

1. サニーデイ

この作品では、インターネットオークションでの成功体験から、主婦が自宅の不用品を次々と出品し始め、最終的には夫の大切な私物まで出品してしまうというストーリーが展開されます。物の価値が家庭内の関係にどう影響するかを考えさせられます。

2. ここが青山

この話では、夫が専業主夫となる決断を迫られ、迷う間もなく妻が昔の職場に復帰した後、夫は家庭を支えるために奮闘します。主たる役割の変化がもたらす葛藤や安定に対する思いが鮮明に描かれています。

3. 家（うち）においでよ

このエピソードでは、妻と別居が決定した夫がガランとした部屋を自分の趣味に応じて改装し、自分の空間を取り戻していく様子が見えます。個人の趣味と家庭の関係性についての深い考察がなされます。

4. グレープフルーツ・モンスター

内職の斡旋を行う会社の担当者として働く主婦が、冴えない中年男から今どきの若者に心変わりするという不思議な物語です。この作品は禁断の夢と現実の交錯を描きます。

5. 夫とカーテン

ここでは、夫が転職を繰り返すことで、その影響を受けた妻が仕事の質を格段に向上させるイラストレーターを中心とした物語が展開されます。職業における責任感が、家庭や愛情にどのように影響を与えるのかが探られています。

6. 妻と玄米御飯

また、作家が自身の作品にユーモアを見出しながら、ロハスに興じる妻やその仲間たちを揶揄する様子が描かれています。家庭内での価値観の違いが、視点の変化を生む様子が興味深く描写されています。

書誌情報

『家日和』は、2007年4月5日に集英社より刊行され、ISBNは978-4-08-774852-9です。その後、2010年5月20日に集英社文庫版も登場し、ISBNは978-4-08-746552-5です。また、2008年5月19日には西村拓による漫画版も発表され、ISBNは978-4420151511となっています。

この短編小説集は、家族間の微妙な関係性や日常の出来事をユーモラスかつ切実に描写しており、読み手に新たな視点を提供してくれる作品です。奥田英朗の独特な感性が光る本書は、現代の家族を考察するうえで欠かせない一冊と言えるでしょう。

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