家見舞

家見舞（いえみまい）

家見舞（いえみまい）は、日本の古典落語の一演目です。別名として「こいがめ（肥瓶）」、「祝いの瓶」、「新宅祝い」などあり、落語の中でも独特のエピソードが展開されます。この演目は上方落語の「雪隠壺」とも類似点が見受けられますが、主に贈り物にまつわるドタバタ劇が中心となっています。

あらすじ

この物語は、二人の男が新築祝いのために、兄貴分に喜んでもらおうと水瓶を贈ることを決めるところから始まります。ただし、二人とも所持金はわずか5銭しかありません。そこで、古道具屋で近くの物を探すことにしますが、どう考えても5銭では水瓶を見つけるのが難しい状況です。

彼らは店内を探し回り、ようやくそれなりの価格の瓶を見つけます。しかしそれは、なんと肥瓶（トイレ用の瓶）でした。店主は「それならタダでいい」と言い、恥ずかしがり屋な二人は、まさに無駄な出費を避けるためにこの肥瓶を水瓶として兄貴分に贈ることに決めるのです。もちろん、厄介な匂いが漂っているこの瓶に水を張ってごまかそうとするのですが…。

兄貴分の家に辿り着くと、二人は手にした肥瓶を水瓶と称して贈ります。兄貴分は何も疑わず大いに喜び、ちょっと一杯飲んでくれと声をかけます。二人も喜びつつ飲んでしまいますが、運ぶ途中でその不快な臭いが手につき、さすがに気になり始めます。そこで、急遽風呂屋に寄り一風呂浴びてから、兄貴分の家に戻ることにしました。

帰宅後、兄貴分は酒とともに冷たい豆腐（冷奴）を出し、二人は思わず「これは美味い」と喜びます。しかし、そこで発覚する重大な真実。それは、冷やされた豆腐があの肥瓶の水で冷やされていたことです。あろうことか、二人は急に気持ちが悪くなり、「もう豆腐はいらない。帰りたい」と言い出します。おかしな二人の様子に兄貴分は不審に思い、水瓶の中を覗き込みます。

すると、そこには膜状の汚物が内壁から剥がれ、その水は濁りを見せていました。それを見ても兄貴分は気づかず、「こういう時はフナ（鮒）を入れておくと、ゴミを食べてきれいにしてくれるんだ」と語ります。男たちは驚愕し、「フナを入れるに及ばねえ。今までコイ（鯉）が入ってた」という返事を返すのです。この一言が、彼らの苦しい状況を一層ユーモラスにし、観客はつい爆笑してしまうでしょう。

この演目は、贈り物のアイデアや細かい配慮が逆に裏目に出る面白さ、そして主人公たちの機転と滑稽さが合わさって、古典落語の中でも特に愛されている作品の一つです。家見舞は、単なる祝いの品がもたらす意外な結果を通じて、日常の中の笑いを引き出そうとする魅力的な物語です。

もう一度検索