寂天

寂天（じゃくてん） - インド仏教の巨星

寂天、またの名をシャーンティデーヴァ（Śāntideva）は、650年から700年頃に活動した南インド出身のインド仏教中観派の僧侶です。彼は父王の死を契機に出家を決意し、後にナーランダー大僧院で学びました。この僧院は最も著名な仏教の大学の一つであり、多くの優れた僧侶がここで教育を受けました。

出身と出家の動機

寂天は王族の出身であり、彼の出家に至る経緯は特異です。父王の死という悲劇は、彼に強い内面的な変化をもたらし、世俗の生活から離れて仏教の道を歩む決意をさせました。このような背景は、彼の精神的修行や後の著作に大きな影響を与えました。

学び舎とその影響

ナーランダー大僧院では、寂天は様々な教えを受け、特に中観派に属する思想を深めました。中観派は、空（くう）の思想に基づいた哲学であり、物事の本質を理解するための重要な教えが盛り込まれています。この哲学的な枠組みは、彼の著作や教えに大きな影響を与えました。

主な著作

『入菩提行論』（Bodhicaryāvatāra）

彼の最も著名な著作である『入菩提行論』は、後期のインド仏教のみならず、チベット仏教にも多大な影響を及ぼしました。この書物は、菩薩の道についての教えを提供しており、仏教徒にとっての倫理的であり、実践的な指針を示しています。この著作は、特に慈悲（じひ）や智慧（ちえ）を重視し、他者を助けるための行動を促すものであり、仏教徒に広く読まれています。

『学処集成』（Śikṣāsamuccaya）

もう一つの重要な著作である『学処集成』は、仏教教義に関する多くの教えを体系的にまとめたものです。この書は、仏教徒が学ぶべき教義や実践を明確にし、信者の理解を助けるための方法論を提供しています。

彼の思想の影響

寂天の影響は、彼の著作を通じて非常に広範囲に及びました。特にチベット仏教では、彼の教えが重要な基盤となり、信者たちに深い影響を与えました。中観派の教えと慈悲の実践は、後の仏教徒にとって重要なテーマとなっており、寂天の思想が今なお生き続けています。

関連項目

• - 中観派: 寂天が属していた思想体系。
• - 帰謬論証派: 中観派の一部として著名な哲学的流派。
• - プラジュニャーカラマティ: 寂天の思想に関連する重要人物。

このように、寂天はインド仏教における重要な指導者であり、彼の教えは今でも多くの人々に学ばれ、実践されています。彼の智慧や慈悲の教えは、単に古の教えに留まらず、今日の社会にも重要な意味を持っています。

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