密陽世宗病院火災

密陽世宗病院火災（ミリャン・セジョンびょういんかさい）は、2018年1月26日に大韓民国慶尚南道密陽市駕谷洞に所在する世宗病院で発生した、多くの犠牲者を出した火災事故です。

この火災は病院本館の1階から発生しました。通報を受けて消防隊が出動し、懸命な消火活動の結果、出火からおよそ1時間40分後に鎮火に至りました。病院は本館と別館に分かれていましたが、別館に入院していた約90名の患者は、迅速な避難誘導によって全員が無事でした。

しかし、火元となった本館では甚大な被害が発生しました。火災発生当日の午後遅くに発表された情報によると、当時本館に入院していた約200名の患者のうち、37名が死亡し、131名が重軽傷を負ったとされました。その後も負傷者の容態が悪化し、残念ながら複数の方が亡くなりました。2月上旬にかけて死者数は増加し続け、最終的にこの火災による犠牲者は合計で47名に達しました。

多くの犠牲者が出た主要因として、火災によって発生した有毒な煙やガスが建物内部に急速に拡散したことが挙げられています。病院内には防火扉が設置されていなかった箇所があったり、あるいは火災発生時に防火扉が開いたままになっていたりしたことが、煙やガスの拡散を許し、被害を拡大させたと指摘されています。死亡した方の多くは、炎による直接的な被害よりも、煙を吸い込んだことによる窒息が原因とみられています。

また、当時の世宗病院の状況にも問題があったことが明らかになりました。入院患者の大半が高齢者や自力での避難が難しい重症者であったにもかかわらず、病院の職員配置が法定基準を大きく下回っていたとされています。このような人員不足は、火災発生時に多数の患者を迅速かつ安全に避難誘導する上で大きな障害となった可能性が指摘されました。さらに、建物に違法な増築が繰り返し行われていたにもかかわらず、その状態が改善されずに放置されていたことも、避難や消火活動を困難にした要因として取り沙汰されました。

密陽世宗病院火災は、発生のわずか前月である2017年12月にも忠清北道堤川市で29名の犠牲者を出したスポーツセンター火災が発生していた直後の出来事であり、韓国国内で短期間に大規模な火災事故が連続したことで社会に大きな衝撃を与えました。また、この火災による死者数47名は、2003年に192名の犠牲者を出した大邱地下鉄放火事件以来、韓国国内で発生した火災事故としては最も多い数となりました。この悲劇的な事故は、高齢者施設や病院など、避難弱者が多数利用する施設の建築基準、消防設備、人員配置といった安全管理体制のあり方について、改めて厳しい視線が向けられるきっかけとなりました。

もう一度検索