密陽市

密陽市（ミリャンし）

韓国南東部、慶尚南道の東に位置する密陽市は、古くから「密陽アリラン」の発祥地として広く知られています。北は慶尚北道および蔚山広域市と隣接し、南東部地域の交通の要衝でもあります。

歴史

密陽地域の歴史は古く、高麗時代の1285年には密性郡に昇格、李氏朝鮮時代の1390年には密陽府へと発展しました。近代に入ると、行政区画の再編が活発に行われます。1914年の郡面統廃合により周辺地域の一部が編入され、新たな面が多数設置されました。その後も面名称の変更や統廃合が繰り返され、1931年には密陽面が密陽邑に昇格し、1邑12面体制となります。

1963年には三浪津面が三浪津邑に、1973年には下南面が下南邑にそれぞれ昇格し、1989年には密陽邑が密陽市として郡から分離独立しました。しかし、さらなる効率化を目指し、1995年1月1日、旧密陽市と密陽郡が合併し、現在の新たな密陽市が誕生しました。この合併により、密陽郡はその歴史に幕を下ろしました。

地理と気候

慶尚南道の東端に位置する密陽市は、山地と河川が織りなす多様な地形を有しています。気候は内陸性気候の特徴が顕著で、夏は暑く、冬は寒さが厳しくなります。過去には最高気温39.4℃（1994年7月）や最低気温-15.8℃（1990年1月）といった極端な気温が記録されています。

行政とインフラ

市内の治安維持は密陽警察署が、消防活動は密陽消防署がそれぞれ担っています。交通網は発達しており、鉄道では韓国鉄道公社（KORAIL）の京釜線が市の中心部を通り、密陽駅は主要な停車駅となっています。京釜線から分岐する慶全線や美田線も通っており、鉄道交通の結節点としての役割も果たしています。

道路交通では、大邱-釜山高速道路が市内に複数のインターチェンジを有し、広域的なアクセスを支えています。国道24号線、25号線、58号線をはじめとする幹線道路や、複数の地方道、国家支援地方道が市内各地を結んでおり、陸路での移動もスムーズです。長距離移動には密陽市外バスターミナルが利用されています。

教育・文化施設

教育面では、国立大学である釜山大学校の密陽キャンパスが立地しており、地域の高等教育を担っています。高等学校は、公立の密陽高校、密陽女子高校、密陽電子高校を含む複数の高校があり、多様な教育機会を提供しています。市民の教養を深める場としては、密陽市立図書館をはじめとする複数の図書館が利用可能です。地域の歴史や文化を紹介するミリボル民俗博物館も訪れる価値があります。

観光とイベント

密陽市には、自然美と歴史的な建造物など見どころが豊富です。涼やかな景観が広がる氷谷や、李朝時代の功績を称える表忠碑、そして朝鮮時代の代表的な楼閣である密陽嶺南樓は、市の象徴的な観光地です。文禄・慶長の役で活躍した泗溟大師にゆかりのある古刹、表忠寺も多くの観光客が訪れます。周辺の加智山は、嶺南アルプスの高峰として知られ、登山愛好家にとって人気のスポットです。

毎年、密陽アリランの発祥を記念する「密陽アリラン大祭り」が盛大に開催されるほか、秋には特産品であるナツメをテーマにした「密陽ナツメ祭り」も行われ、多くの来場者で賑わいます。

特産品

密陽の特産品としては、庶民的ながら滋味深い味わいのテジクッパが有名です。また、農業が盛んな地域であり、辛味の効いた唐辛子、みずみずしい氷谷リンゴ、そして甘みが特徴の密陽ナツメは、地域の代表的な農産物として知られています。

主な出身者

密陽市は、歴史上の人物から現代の著名人まで、様々な分野で活躍した人物を輩出しています。朝鮮独立運動家として知られる金元鳳や、文禄・慶長の役で僧兵を率いた泗溟大師は、この地の歴史に名を刻んでいます。近年では、K-POPアイドルグループDKBのメンバーであるHEECHAN氏が密陽市出身です。

姉妹都市交流

国際交流にも積極的で、日本の滋賀県近江八幡市、島根県安来市、そしてアメリカ合衆国ニュージャージー州ニュー・ミルフォードと姉妹都市提携を結んでいます。国内では全羅北道の南原市とも姉妹都市として友好関係を築いています。

その他、密陽市は、世界的な評価を受けたイ・チャンドン監督の映画「シークレット・サンシャイン」の舞台としても知られており、その美しい風景が作品を通じて紹介されました。

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