富士タクシー (鹿児島県)

富士タクシー有限会社（ふじタクシー）は、かつて鹿児島県姶良市蒲生町に本社を構えていた運輸事業者です。主な事業内容はタクシー事業でしたが、特に地域交通における役割として、姶良市の乗合タクシー運行を請け負っていたことで知られます。

この乗合タクシー事業は、市町村合併によって姶良市が誕生する以前、姶良郡蒲生町によって始められました。

乗合タクシー運行開始の経緯

乗合タクシーの運行が始まったのは1995年4月6日のことです。これは、前日の4月5日をもって運行を終了した九州旅客鉄道（JR九州）のバス路線、具体的には「塞瀬戸 - 酒屋段」間を引き継ぐための代替交通手段として計画されたものです。当時の運行主体は蒲生町であり、富士タクシー有限会社がその運行を担う形で行われました。運行当初の区間は、蒲生町内と酒屋段を結んでいました。

姶良市への継承とその後の展開

2010年3月23日、蒲生町は周辺の自治体と合併し、新たに姶良市が発足しました。この新設合併に伴い、それまで蒲生町が運営していた乗合タクシー事業は、そのまま新しい姶良市へと引き継がれることになりました。名称も「蒲生町乗合タクシー」から、旧蒲生町域をカバーする「蒲生地区乗合タクシー」へと変更されました。

姶良市が発足した後も、富士タクシー有限会社は旧蒲生町域における乗合タクシーの運行を継続しました。当初は主に1路線を運行しており、平日のみの運行体制が取られていました。運行ルートの一例としては、以下のような停留所を経由していました。

蒲生駅
楠田
白男下
くすの湯
税所公園前
真黒
酒屋段
面貫

運行開始当初は1路線でしたが、地域住民の移動需要に合わせて路線の拡充が進められました。2021年を迎える頃には、蒲生地区で運行される乗合タクシー路線は3路線にまで増加していました。

運行事業者の変更

長年にわたり蒲生地区の乗合タクシー運行を担ってきた富士タクシー有限会社でしたが、2021年4月1日をもって、この事業から撤退することとなりました。同日以降、蒲生地区乗合タクシーの運行業務は、新たに第一交通産業株式会社の姶良営業所が引き継ぎ、現在に至っています。

富士タクシー有限会社がいつ頃まで存続していたか、あるいは事業内容がどのように変化したかといった詳細な情報は本稿では把握できませんが、少なくとも2021年時点では、地域に根差した交通事業者として、特に公共交通空白地域における重要な移動手段である乗合タクシーの運行を担っていたことは間違いありません。その歴史は、地域の交通事情の変化と、それに対応するための自治体および事業者の取り組みを示す一例と言えるでしょう。

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