富士型戦艦

富士型戦艦の概要

富士型戦艦（ふじがたせんかん）は、日本海軍の前弩級戦艦として知られ、同型艦は「富士」と「八島」の2隻が存在します。これらの艦は1897年に竣工し、イギリスで建造されました。「八島」は日露戦争で戦没しましたが、「富士」は太平洋戦争の終結まで48年間、海軍に在籍していました。

1. 建造の背景

1880年代の終わり、当時の日本は清国の海軍力に脅威を抱いていました。清国はドイツ製の戦艦「定遠」と「鎮遠」を保有し、これに対抗するために日本海軍は新たな戦艦の建造を計画しました。しかし、予算不足が続き、計画は何度も頓挫しました。1892年には11400トン級戦艦の建造案が検討されましたが、またもや予算の問題で実現しませんでした。

1893年に明治天皇が予算確保のための勅令を出し、ようやく建造の道が開かれました。「富士」はテムズ造船所で、「八島」はアームストロング社エルジック造船所で工事が始まりましたが、どちらも日清戦争には間に合いませんでした。

2. 設計の特徴

富士型戦艦は、イギリス海軍の「ロイヤル・サブリン級」を基本に、その後のマジェスティック級での新技術を取り入れた設計がなされました。主砲に採用されたのは新設計の「アームストロング 30.5cm（40口径）砲」であり、日本の戦艦として初めて全面装甲板で覆った連装式砲塔が組み込まれています。しかし、砲塔の位置を戻さなければ弾薬が供給されないという弱点がありました。

装甲の厚さは、舷側水線が457mm、甲板が63.5mm、司令塔が356mmと、当時としては高い防御力を誇りました。この装甲は脆く硬い鋼と柔らかく靭性のある鉄の複合構造で、特に主装甲にはハーベイ鋼を多用していますが、重心の変動を考慮し、設計変更が行われずに建造されました。

3. 艦形の設計

富士型の艦形は、乾舷が高い平甲板型で、艦首には主砲塔が1基配され、その後ろに司令塔と艦橋が構成されています。さらに、ミリタリーマストが立ち、見張り台が設けられています。このミリタリーマストは、高所に防御用の速射砲を備え、奇襲攻撃から自身を守るために設置されました。

4. 主砲の性能

主砲には「アームストロング 30.5cm（40口径）砲」が搭載され、最大15度の仰角で、386kgの砲弾を最大13700mの距離まで飛ばすことができました。また、発射速度は5分間に1発だったため、同型艦の「ロイヤル・サブリン級」よりも防御性能に優れる設計となっています。

5. その他の兵装

副砲としては「アームストロング 15.2cm（40口径）速射砲」が使用され、片舷に10基配置されており、対水雷艇用にフランス製の「オチキス 4.7cm（43口径）単装機砲」を20基標準装備しています。さらに、魚雷発射管も搭載され、近接戦闘に備えた多様な装備が整っています。

6. 同型艦の概要

• - 富士：建造費約1,038万円。
• - 八島：建造費約1,050万円。こちらは日露戦争中に戦没。

このように、富士型戦艦は日本海軍の技術革新の象徴であり、当時の海軍力の重要なファクターとなりました。

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