富士山・河口湖映画祭

富士山・河口湖映画祭は、山梨県富士河口湖町において2008年から2017年にかけて開催されていた映画祭です。正式名称に「・」（中点）が含まれるのが特徴でした。

この映画祭の誕生は、隣接する甲府市で2005年から行われていた「やまなし映画祭」での一つの試みに端を発しています。やまなし映画祭では、「街を舞台にした脚本を一般公募し、それを基に映像作品を制作する」という、地域住民が参加しやすいオリジナルの映画制作企画が実施されていましたが、運営事務局内で費用対効果に関する懸念が生じ、この企画は2006年の第2回をもって終了しました。この企画の継続を強く望んでいた一部のスタッフが、その理念を引き継ぐ可能性を探る中で、富士河口湖町に提案を持ちかけました。

町の理解と協力が得られ、必要な予算が確保されたことで、この地域密着型の映画制作・上映企画は富士河口湖町で新たに展開されることになります。2007年9月には早くも脚本の募集が開始され、準備が進められ、2008年2月23日に記念すべき第1回富士山・河口湖映画祭が開催されました。

映画祭の中心的な内容は、その設立経緯からもわかる通り、「地域性を活かした脚本の公募と、そこから生まれる映画の制作・上映」でした。毎年開催されるシナリオコンクールでは、富士河口湖町を舞台としたオリジナルの物語の脚本が募集され、優れた作品には賞が授与されました。特にグランプリに選ばれた脚本は、単なる表彰にとどまらず、翌年の映画祭での上映を目指して実際に短編映画として映像化されるプロセスが確立されていました。この映画制作には、プロの映画監督や俳優が起用されましたが、撮影場所の提供、撮影クルーへの炊き出し、エキストラ出演など、多くの面で富士河口湖町および地域住民の協力が不可欠であり、まさに町ぐるみで一本の映画を作り上げるという独特なスタイルが特徴でした。グランプリ作品は、シナリオ決定から約1年間かけて撮影や編集が行われ、完成した作品は翌年の映画祭で初めて披露されるというサイクルが基本となっていました。メインの企画であるシナリオコンクール関連以外にも、富士山というこの地域にとって象徴的な存在に関連するテーマを持つ映画が特別に上映されることもありました。

富士山・河口湖映画祭は、2008年の第1回から2017年の第10回まで、合計10回にわたって開催されました。この10回の開催期間中に、シナリオコンクールを経て合計9本のオリジナル短編映画が制作・上映されています。最後の開催となった2017年の第10回では、新たなシナリオコンクールは実施されず、前年にグランプリとなった「春待ちかぼちゃ」を含む、過去に制作された全ての9作品がまとめて上映されるという形で幕を閉じました。

映画祭の会場では、制作されたオリジナル作品の脚本集や完成した映画を収録したDVDなどが販売されていましたが、これらは基本的に会場限定であり、一般市場には流通していませんでした。そのため、映画祭の終了後は入手が困難な状況が続いていました。しかしながら、2022年には、この映画祭から生まれた作品のうち、五藤利弘監督が手掛けた4本（『鐘楼のふたり』『ジョフクの恋』『ブーケ 〜a bouquet〜』『春待ちかぼちゃ』）を収録した短編集DVDが新たにリリースされ、一部作品については再び鑑賞する機会が提供されています。

富士河口湖町では、この映画祭と名称が類似した「富士山河口湖音楽祭」という音楽イベントも2002年から開催されています。こちらは正式名称に「・」（中点）が入らない点で、富士山・河口湖映画祭とは異なるイベントです。

映画祭に関する一部の情報は、YouTubeチャンネルやFacebookページなどで今も公開されています。

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