富士通Habitat

富士通Habitatとその関連サービス

富士通Habitat（ふじつうハビタット）は、1990年に富士通株式会社が開始した画像を用いたチャットサービスであり、当時としては斬新なコンセプトを持っていました。おもにニフティサーブの会員に向けたこのサービスは、アメリカのルーカスフィルムが運営していたHabitatのライセンスを利用して誕生しました。1989年末にテスト運用がスタートし、正式なサービスが始まった1990年2月10日は、ユーザーにとって「富士通Habitat建国記念日」とされました。富士通Habitatは、特にアバターを使用した2Dの仮想空間でのコミュニケーションを提供する革新性を持っていました。

提供されたサービスの概要

富士通Habitatでは、主に4つのサービスが提供されました。これには、最初の「富士通Habitat」、その後の「Habitat IIエリシウム」、「Habitat IIグレースビル」、さらには「J-チャット」が含まれます。

富士通Habitat

富士通Habitatは、アバターを操作し仮想の街で他のユーザーとチャットを楽しむサービスで、特にアバターによるビジュアルコミュニケーションが注目されました。利用するには専用ソフトが必要で、当時のパソコン通信回線の速度はまだ低速だったため、レスポンスに課題がありました。ユーザー数は期待したほどには伸びず、コミュニティとしての活性化は限定的でした。

Habitat IIエリシウム/グレースビル

1996年には「Habitat IIエリシウム」として機能が拡充され、Windows環境への対応やアバターのカスタマイズが可能になりましたが、接続環境やシステムの限界により、利用者の増加は見られませんでした。また、1998年にスタートした「Habitat IIグレースビル」は、完全に新しいインターネット専用のサービスで、アバターの動作や回線性能が大幅に改善されましたが、こちらも短命に終わりました。

J-チャット

その後、1999年には「J-チャット」がスタートしました。このサービスは、特に女性ユーザーをターゲットにしており、タレントによるイベントなども開催されました。その人気は長続きし、2006年には再现イベントが行われるなど、当時のファンに支持されていました。しかし、2010年1月にサービス終了を迎え、その20年の歴史に幕を下ろしました。

アバターおよびオラクルの役割

富士通Habitatでは、ユーザーは自分のアバターを作成し、仮想空間で他者と交流しました。アバターは約300種類の異なるヘッドから選択でき、体型は男女2種類のデザインが用意されていました。アバターの住む区域は町と呼ばれ、掲示板などのコミュニケーションツールもありました。また、仮想空間内にはオラクルと呼ばれる運営側の存在があり、彼らはプレイヤー同士のトラブル解決やイベント運営を司っていました。このオラクル制度は、Habitat IIエリシウムまで存在し、その後はナビゲーター制度に移行しました。

課金システム

サービスの利用には従量課金システムが採用されており、ユーザーは管理費や通信費を支払う必要がありました。最初の折には、料金システムに関する不満が多く寄せられ、以降のサービスに影響を与えました。また、課金体系の変更やイベントの実施による影響も顕在化し、多数の利用者が離れていく原因となりました。

終焉とその後

2009年8月、J-チャットはサービスの終了を宣言し、最終的に2010年1月にその運営が終焉を迎えました。J-チャットの人気は一時的に高まりましたが、長期にわたり安定した利用者を維持することは困難で、他の新しいオンラインサービスが台頭する中、次第にその存在感は薄れていきました。現在では、当時の影響がどのようにその後のオンラインコミュニケーションに影響を与えたのかを振り返りつつ、懐かしむファンも多く残っているようです。

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